ネーター﹂の存在が、その背景にあるといいます。保健福祉圏域ごとの市町村の障害担当部局、当時の雇用支援センターなどに配属されたこの人材は、障害者を雇用する企業へのきめ細かいフォローアップとともに強固な人的ネットワークを構築し、その効果が現在も支援組織間のネットワークとして活かされているのです。そのため、個々のケースの課題の状況や展開に即応して、ハローワーク(障害者職業センターもあわせて)と障害福祉サービス事業所の担当者相互の共同作業と引継ぎが円滑に行われているそうです。全国的に見てもこれほど深い連携ができる地域は多くはないということです。また、社会福祉法人宮崎県社会福祉事業団は、﹁障害者就業・生活支援センター事業﹂を国から受託し、﹁みやざき障害者就業・生活支援センター﹂を運営しています。所長の大お坪つ哲て郎ろさんのお話では、同センターの正規職員は事業団の職員のため、事業団内全体で人事異動が定期的にあり、就労支援や困難事例への対応が不十分になりかねないという懸念があるそうです。しかしながら、この支援組織おぼつう 間のネットワークが機能していることにより、雇用支援の経験が浅い人でも、企業やほかの支援機関との共同支援を円滑に行えるという利点があるということです。 ﹁加藤えのき﹂の事例で見たように、障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターは一体となって、つねに情報共有をしながら、就業と生活支援の両側面の支援を一緒にになっているのです。えのきの一貫生産工場への興味から始まった訪問でしたが、障害者雇用における中小企業の底力として、いくつかのことを考えさせられました。第一に、地元の中小企業の有用性です。長年住み慣れた生活圏にある中小企業の関係者は、障害のある方本人やその家族あるいは近親者と知り合いであれば、縁故採用の機会が生まれます。状況をよく知っているため、本人の職務遂行上の能力ばかりでなく、生活全般に対する面倒を見る事業主も少なからずおられます。そうした職務遂行と生活支援の双方に対する面倒見のよさは、障害のある人の働く場として非常に望ましいといえます。第二に、ダイバーシティ&インクルージョンの効用です。多くの外国人スタッフとともに障害のある人も雇い入れて活き活きと働いている姿を動画などにしてSNSで発信することにより、﹁働きたい企業﹂のイメージ形成とともに、国内外の人材募集に貢献しています。障害のある人も求人に応募したい気持ちに駆られることでしょう。第三に、人的ネットワークを基盤とした支援ネットワークの構築の重要性です。ジョブコーチや支援者などの個人的ネットワーク(ミクロネットワーク)の重要性をあらためて知るとともに、それが、支援人材の所属する機関・組織同士のネットワーク(メゾネットワーク)の構築の原動力となっています。強固なミクロネットワークを基盤にしたメゾネットワークになると、同時並行的に異なる機関が同じ人を担当することで、状況に応じて支援組織や機関に円滑に引き継ぎやすくなるでしょう。そのことが支援サービスの断片化を防ぐのです。まとめ働く広場 2023.11みやざき障害者就業・生活支援センターみやざき障害者就業・生活支援センター所長の大坪哲郎さん25
元のページ ../index.html#27