働く広場2023年12月号
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年間200人が退職していたが地道に労働環境を改善ないので、周りに合わせる努力をしています」という佐藤さん。不安があるときは一人で抱え込まず、周りの人に相談することも心がけている。同社には複数の物流センターがあり、職種も多岐にわたっている。そしてそれが、障害者雇用を進めるうえでのアドバンテージにもなっているようだ。山田さんは「バスで通勤しやすい立地の物流センターを中心に採用を行っています。また、働く障害のある人の生活リズムに配慮して、深夜時間帯での勤務を避けて募集しています」と教えてくれた。また、さまざまな職種があるということは、シフトによりフレキシブルな働き方ができるという強みにもなる。はじめからフルタイムでの勤務は避け、短時間からスタートして徐々に時間を延ばしていく方法を、障害の有無にかかわらず採り入れている。体力がいる仕事であるため、障害のない人も含めて「いきなりフルタイムはキツい」という方も多いだろう。全従業員にとって、非常にありがたい取組みである。ここまで配慮の行き届いた職場になるまでには、紆余曲折もあった。2017年度からは「トレーナー制度」や「採用教育部門」が整備されたが、その経緯についてもたずねてみた。 「じつはトレーナー制度などができた背景には、『離職率を下げたい』という思いがありました。お恥ずかしい話ですが」と、山田さんが口を開く。元々物流センターというのは、人の出入りが激しい業種だそうだ。共同物流でも7〜8年前は、年間約200人が退職し、同じ人数が入社していた。月に約15人が退職するということが常態化していたのだ。退職の大きな理由の一つが人間関係。具体的には、新しく入社した人を教える際、感情的に叱ったりするケースが多く見受けられた。教える側も「教えるための教育」を受けていないので、当然のことでもある。 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という山■本■五■十■六■の名言がある。この考え方を体現できるように、教育を担当する社員がコーチングや傾聴について学ぶ環境を整えていった。教育担当の社員は、全社で約150人。ベテランの社員やスキルの高い社員を推薦し、研修を受けたうえで新人教育にたずさわってもらう。複数の教育担当者を部下に持つ鈴木さんも、現場で毎日、「どうすれば人が辞めない職場になるのか」をつねに意識していたという。いまも「今日の作業はどうだった?」と、新しく入った社員に声をかけ、部下のリーダーたちとも積極的にコミュニケーションをとるよう心がけている。こうした努力が実を結び、現在では退職者は年間80人ほどまで減ったそうだ。加えて、「会社の労働環境が改善された」と山田さんはいう。じつは10年ほど前は残業も多く、整った労働環境の会社とはとてもいえなかった。しかし、盛田さんが取締役として同社に来てからは、さまざまな改革が行われた。まずは採用を強化して人材不足を解消。その結果、残業が減り、少しずつ現場の意識も変わっていった。年次有給休暇も遠慮せずに取れるようになったという。 「制度を一つずつ見直して、規程を大幅に変えました。社長も全面的に協力してくださったことで、改革は進めやすかったです」と盛田さんはふり返る。組織が変革していくには一度に大きく  ■■■      話を聞いて感じた。変わるということではなく、従業員一人ひとりの意識の改革が必要なのだろうと袋詰めされた玉ねぎをカートに積み込む佐藤さん八戸低温物流センターで働く佐藤良考さん働く広場 2023.1224

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