働く広場2023年12月号
4/36

大阪・京都こころの発達研究所葉よ代表私がクライアントとかかわる際に大切にしていることは、①「違う」を否定しないこと、②間違えたときは素直に謝ることです。これらについて説明をしていきますが、その前に、いまから少し実験をしてみたいと思います。紙とペンを手元に用意し、次の指示にしたがって図を描いてみてください。指示は三つです。まず丸を二つ描いてください。次に四角を描いてください。最後に丸と四角を線でつないでください。みなさん、どのような図が描けたでしょうか。最初に描いてもらった二つの丸を、縦に並べた人、横に並べた人、二重丸のように重ねて描いた人などがいるでしょう。丸の大きさが異なっている人、同じ大きさで描いた人、丸同士がくっついている人、離れている人がいるでしょう。四角はどのように描いたでしょうか。正方形、長方形、台形、ひし形などさまざまな四角があります。四角の数は指定していませんので、丸と同じように二つ描いた人、一つしか描かなかった人、たくさん描いた人もいるでしょう。線は、まっすぐ引いている人、曲がって描いている人、ほとんど描くスペースがない人など、これもさまざまでしょう。三つの指示にしたがって図を描いてもらいましたが、どの指示も一つひとつは非常に簡単なことです。しかし、描きあがった図は、一人ひとり異なるものになったはずです。ここから伝えたいことは、同じ言葉でも一人    う2ひとり、思い浮かべることが違うということです。「丸を二つ」といわれたとき、同じ大きさの丸が二つ並んでいるものを思い浮かべても、二重丸を思い浮かべても、間違ってはいません。これを複数の人がいる場でやってもらい、最後にお互いが描いた図を見せ合ってもらうと、「普通は横に並べるでしょ」、「どうしてそうなるの?」と驚きと笑いが入り混じった声が多くあがります。多くの人は、自分が思い浮かべたものを「普通」と思う傾向にあります。そのため、自分が想像していなかったものをほかの人が表出すると驚き、「普通はそうしない」と否定したくなります。人と人がかかわると、こうした事象は非常によく起こります。しかし、そうしたときに違いを否定せず、「違う」ということを確認し、そのうえでどうしたらよいかを話し合うことが大切だと私は考えています。いたとき、その人は「後でよいと思った」と答え、自分は「先にしてほしかった」とします。後でよいと思った、その人なりの理由(例:上司が忙しそうだった)を確認し、それが自分の考えと異なっていたとしても(例:忙しそうにしていても声をかけるべき)、どちらが合っている・間違っていると判断するのではなく、考え方や判断の基準が違ったのだと考えます。そうすると、相手を否定することなく、自分の考えや判断基準具体例をあげます。仕事の報告が遅れた人が浜内彩乃自分の正しさを手放すことで得られる信頼働く広場 2023.12

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る