れていくと任せることができる業務も増え、本人もモチベーションを維持して働き続けていけることがわかりました」これは、社会福祉士・精神保健福祉士でもある呼子さんが別の病院の障害者就労支援にかかわったとき、「企業側から提案された画一的な業務をやってもらうだけでは続かないという事例をいくつも見てきた」との苦い経験をふまえた対応だった。最初は、現場でいつのまにか業務が増えていたことも少なくなかった。老健センターの看護師長を務める松ま本も孝た子こさんが話す。 「いつも笑顔で応じてくれる彼らについ、いろいろと頼んでしまったことがあり、それが負担になっていたようでした。現場の職員には『勝手に業務内容を変えないこと』を徹底させました」また受入れ部署では、それぞれ2人の職員に障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けてもらい、現場ごとに可能な指導や支援も行うようにしたという。介護事業での雇用が拡大するなか、博愛会は2019年に「障がい者雇用推進室」を設置。呼子さんが室長を務めるこげる繁しさんから、「先進的な施設を見学してとになった。まだ準備段階だった2017年、呼子さんたちは博愛会の理事長を務める那な須すみよう」とすすめられた。それが熊本市にある社会福祉法人恩賜財団済さ生せ会か熊本福祉センターだった。そこで就労継続支援B型事業と生活介護事業を行う多機能型事業所の管理者だった成な松ま隆り一いさんにアドバイスをもらい、センターを退任後、2019年に博愛会の「障がい者就労推進アドバイザー」になってもらったそうだ。成松さんは月1回、会議や現場巡回、ケアメイト全員との個人面談などに参加している。会議には看護部長や看護師長らも出席し、現場から上がってきた課題や情報の共有をしながらトップダウン式に現場へと理解を広げてきた。成松さんは「最初に理事長から『病院も含めグループ全体に、障害のある人の雇用を広げたい』との思いを聞き、この4年間で医療現場にまで職域を拡大できたのは大きな成果でした」と話す。一方の呼子さんも「同じ医療分野の障害者雇用で豊富な知見を持つ成松さんに、第三者的な視点で、内部では気づきにくい課題や改善点も見つけてもらっています。一連の取組みについて、理事長がバックアップする意思をいろいろな形で伝えていただけたこともゅう晶あ男おさんが代表を務める「医療機関の障素も子こさんが説明する。心強かったです」とふり返る。また博愛会は、2019年4月に依よ田だ害者雇用ネットワーク」(※2)に入会した。同ネットワークで情報交換とノウハウの共有が行われており、ホームページの閲覧や依田さんとの交流を通して学んだ知識や見解は、博愛会の障害者雇用を進めるうえで、なくてはならないものとなっている。2021年に病棟(145床)への配属をスタートさせたときは、まず1人の実習生を迎え現場から「よかった」との高評価を得て、それから3年間でケアメイトを5人に増やした。スムーズに進んだ背景について、看護部長を務める田た中な 「病棟では2012年から、ケアサポーターと呼ばれる70~80代の派遣職員の方たちが周辺業務をになってくれていたので、その実績をもとに業務を切り分けました。現場ではケアサポーターがケアメイトと一緒に取り組みながら、自然な形でサポートし合う関係もできました」ただ日々刻々と状況が変わる医療現場だけに、ケアメイトたちの担当業務も、外部からアドバイザー専任のジョブコーチ かつと とか つりちいいい き6※2 「医療機関の障害者雇用ネットワーク」ホームページ https://medi-em.net/学校や家庭に渡される資料には、実習風景の写真や作業のポイントが記載されている(左3枚)。ケアメイトとの交換日記には、ていねいなフォローが書かれている働く広場 2023.12
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