つねに交通整理をする必要がある。その役割を果たすのが、障がい者雇用推進室の主任で企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)である仲な西に千ち絵えさんだ。2020年6月からジョブコーチ専任となった。 「私は13年前の入職後から病棟クラーク、訪問部門、老健センターなど各部署を経験したので、ケアメイトたちの仕事の調整面では、一緒に仕事をしてきた同僚とのつながりが大きな支えです」いまでは田中さんも「仲西さんのような専任者がいなければ、現場はスムーズに回らないと思います」と頼りにしている存在だ。仲西さんは「私たちは、ケアメイトのみなさんの近い未来ではなく、遠い未来を想い描きながら支援することを、つねに心がけています」と語る。そんな障がい者雇用推進室の支援エピソードを一つ紹介したい。ある10代の男性は、入職3カ月ほどで かし 7せる」との連絡があったが、呼子さんは「体精神的に不安定になった。朝、母親から「本人が職場に行きたくないようなので休ま調に問題がなく、気分が乗らないという理由で仕事を休むことは本来NGであることを伝えてほしい」と依頼したという。こうした家庭とのやり取りができるのは、特別支援学校在籍時の職場実習中に保護者と何度も面会していることもあったからのようだ。「本人が成人するまでは、ご家庭の協力もお願いしますと伝えています」と呼子さん。翌日、職場に来た本人と面談し、気持ちを聞いたうえで、社会人として働くことの責任についてもじっくり話し合った。その後は、仲西さんと母親の間で、何度か手紙のやり取りもあったそうだ。「少しでも日ごろの働きぶりを知ってほしくて、業務内容や現場の職員たちの声も伝えました。家庭からは家での本人の様子を伝えてもらいました」と仲西さんはいう。男性はその後、実習生の指導役を務めるようになり、「社会人として大きく成長しています」と呼子さん。仲西さんは、特別支援学校からの職場実習生のフォローにも力を入れている。1回あたり最大9人、2~14日間にわたる実習期間中は、具体的な作業内容や、食堂でとった昼食メニューなど、日誌のような報告書を学校と家庭に渡している。また、教員向けの職場実習や保護者向けの職場見学も開催し、「医療機関で働くとはどういうものか、広く理解してもらう場にしている」と呼子さんは話す。続いて、病棟や老健センターで働くケアメイトのみなさんを取材した。4階病棟の病室でベッド周りを整える作業をしていたのは、入職4年目のAさん(21歳)。特別支援学校の作業学習でシーツ交換などを練習したかいもあり、最初からスムーズにできたようだ。「現場で『ありがとう』といわれるのがうれしいです。たまに無駄な動きが多くなるようなので、考えながら取り組む努力をしています」と話してくれた。田中さんはAさんについて、「ときどき私が患者さんの排せつ介助をしていると『今日は応援ですか?』と声をかけてくれて、よく見てくれているなと感心します。患者さんの入院が重なるときも、職員たちから『今日はAさんがいてくれるから大丈夫』と頼りにされる存在です」と評価する。入職当初よりフルタイム勤務のAさんは、将来について「学校の教員補助にも興味があります。人材不足の現場を支えられるような仕事をしていきたいです」と意欲的に答えてくれた。5階病棟で病衣の配布作業をしていたのは、入職5年目のBさん(23歳)。「学校の文化祭で福祉をテーマに発表したの家庭と手紙のやりとりも医療・介護現場のケアメイトBさんは、リストを確認しながら病衣の配布作業を行っていたベッド周りの清掃に使用する 器具が積まれたカートを押すAさん働く広場 2023.12
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