きっかけは労働災害車の話をしてストレス解消することです」と教えてくれた。キューサイファームが障害のある従業員を雇用することになったのは、加工工場で起きた労働災害がきっかけだったという。2015年2月、加工工場内で機械の清掃作業を行っていたCさんが、機械のコンベアに巻き込まれて左手首から先を切断するという痛ましい事故が起きた。退院後の同年5月、キューサイファームは、もともと期間雇用だったCさんを事務職の終身雇用に切り替え、さらに正社員に登用した。義手をつけた左手は、いまもしびれが つさし 9残っているというCさん。「幸い利き手を使えたので、片手でのパソコン入力も慣れてきました。一番の心配は車の運転でしたが、いまではスムーズに操作しています。職場のみなさんにはいろいろ支えてもらっています」と語ってくれた。Cさんの事故をきっかけに、キューサイファームでは現場の安全管理体制の強化に力を入れ、その後、事故は起きていないそうだ。Cさんの存在は、自動的にキューサイファームが障害者雇用にふみ出すきっかけにもなった。当時から業務課の課長を務める四よ橋は雅ま美みさんが、現場支援を統括担当することになった。 「基本的な知識を身につけるため、まず障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けました。そこでさまざまな障害のある人の就労状況を知り、『農業は、障害者雇用に合っているかもしれない』と思いつきました」さっそく、四橋さんたちはハローワークの就職面談会に参加。そのときに採用者はいなかったものの、しばらくして公共職業能力開発施設やエスポアから職場実習生の受入れ依頼が来たという。 「当社の農場はつねに人材不足ですし、応募者も少ないのが現状です。実習は、足場の悪い畑でも作業ができる人なら基本的には受け入れしますし、これまで当社から採用をお断りしたことはありません」さらに四橋さんは「どこを重点的に意識して障害者雇用をしていくべきか」を考えるために、特別支援学校を見学して回ったという。さまざまな分野の仕事を実践的に訓練している様子を見て「3年間かけて一定の技術を身につけ、接客や仕事の段取りなども学んできたのだから、職場でもスキルなどをじっくり身につけながら長く続けてもらおう」と決めたそうだ。事務所や現場の掲示物には、ふりがなをふったりイラストを増やしたりして、目を引くわかりやすい伝え方になるように工夫。現場では過度にプレッシャーや負担をかけないよう配慮しつつ、戦力になるためのスキルアップをうながしてきたそうだ。安定して働き続けてもらうには、就労支援機関との連携も欠かせない。「いまも何かあればすぐに連絡を取り合う関係です。先日も、従業員が一時いなくなり、一緒に探し回りました。本人は通勤途中に寄ったコンビニでバイクの鍵をシート内に入れてしまい、歩いて自宅に戻っていました。再び会社に徒歩で向かっていたところをエスポアの担当者が見つけてくれて、本当に助かりました」業務課長の四橋雅美さん業務課で事務を担当するCさん(右)、業務課の経理担当で障害者職業生活相談員の橋本美少代さん(中央)働く広場 2024.1
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