さまざまな業務体験を通じて、生徒を育成しているという。「ジョブトレーニング」は実際の仕事を経験することにより、社会で必要な力を身につけるという考えから取り入れている。組立て作業・検査、梱包・野菜の袋詰め、事務作業のデータ入力、さらにサツマイモやスイカなどの栽培といった農作業もあり、幅広い業務体験を行っている。なかでも、農作業体験を実施してよかった点をうかがうことができた。それは「自分を責めなくなった生徒が多くなった」ことであった。例えば、収穫物のでき栄えが悪かった場合、その原因として、「種が悪いのではなく、水やりが足らなかった、土の状態がよくなかった」という考えに生徒はたどり着く。同じように自らに置き換えて「自分が悪いのではなく、知識を得たり、技術を習得したり、環境を変えればできるようになる」と、学校生活においても自身に対して何をすればよいか前向きに考えるようになり、農作業がそのきっかけになっていると聞くことができた。また環境が原因だとわかることができれば、就職してからも自らに必要な合理的配慮がわかり、会社に申し出ることができることにつながるそうだ。ジョブトレーニングは業務体験であるため、授業内容も固定していない。企業が実際に行っている作業を提供してもらい、授業に取り入れることもしている。また過去のエピソードを紹介すると、ある生徒が業務指示を受けるたびに「〇〇さん」と自身の名前を呼ばれるのだが、何度も呼ばれるうちに「自分は求められている」と感じるようになり、必要とされる喜びを知ったとのこと。その生徒があるとき、教室の前で泣いており、その理由を聞いたところ、その日のジョブトレーニングが中止となったため、悲しくて涙が出てきたのだという。生徒の成長が感じられ、心温まるお話であった。障がいのある生徒や課題を持つ生徒は、得意・不得意がはっきりしているため、学校側が目標プランを提示することがあるそうだ。学校側としては、マイナス面を見るのではなくプラス部分を伸ばしていきたいと考え、それに努めているという。そうしていくうちに、最初は通学できるだけでよいと思っていた生徒も、だんだんと自信が芽生え、やりたいことが出てくる。そうすると、次は卒業、その次は就職と目標が生まれてくる。学校側としては、やりたいことがあればそれを実現させるため、できるだけ各自の意見を吸い上げて授業に取り入れるようにしているという。取材しているなかで感じた名情専の強みの一つは、そういった柔軟な対応ができることにあると感じた。授業の内容変更を一部の教員の判断で実現できること、独立した学校法人であるため自由度が高いことも要因であるようだが、大事な点は生徒との良好な関係を日ごろから構築し、コミュニケーションを図っているという点だ。また、生徒の就職先は情報通信業、製造業、サービス業、青果業、官公庁、そのほかさまざまな業種、多くの企業がある。企業側から求められるスキルがある場合は、それを授業に取り入れて業務への適性を図ることも行っており、それが実際の就職にもつながっている。なお、障がいのある生徒の卒業後の進路は、企業などへの一般就労が9割で、残り1割が就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などとなっている。就職後のフォローについては進路指導主事の中西先生がおもに担当しているが、期間を定めず継続的にフォローをしているという。なんらかの問題が発生した際の対応は に学校側が教えてきたことがよかったのもちろんのことだが、企業の担当者や就職した生徒の意見を聞くことは、在学中か否かがわかる場となっているので、就職先の企業を訪問することを非常に大切にしているそうだ。ジョブトレーニング学校の特長農作業体験で、できたカブを収穫する生徒(写真提供:学校法人名古屋学園名古屋情報専門学校)ジョブトレーニング室には、各業務で使用する器具が揃えられている働く広場 2024.123
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