その答え合わせができれば、いま在籍している生徒たちへのフィードバックや授業の見直しにつなげられるとのこと。また、それにとどまらず、名情専の卒業生が初めて受け入れる障がいのある社員となる企業もあるので、企業の担当者に対し、職場環境の見直しや既存従業員への理解活動の提案、マニュアルづくりのサポートもしている。そうすることで、企業との関係をより密にできるとうかがった。長年のこのような取組みが実を結び、いまでは毎年数十人の障がいのある生徒が就職できるようになっているが、最初のころは中西先生も失敗の連続だったそうだ。当初は、障がいについての知識もまったくない状態で学校への受入れを始め、障がいが関係しているが手帳を所持していない生徒も多く、手探りで授業や指導を行っていたとのこと。そうしたなかで、いざ就職活動で生徒を送り出したときには「教育をやった気になっているだけで、まったくできていないぞ」と企業側から厳しくいわれたこともあったという。そのときは心が折れそうになったそうだが、以降は障がいについて理解するために県内中の就労移行支援事業所を回って勉強し、また生徒一人ひとりとしっかり向き合うことにより、やる気を引き出す方法を少しずつ学んだそうだ。そうやって長い年数をかけて、ようやくいまの形になったという、たいへんご苦労されたお話も聞かせていただいた。授業も、最初のころは検定を数多く受けさせるなどしていたが、現在ではそういった要素は残しつつも、ジョブトレーニングなどを通じて学ぶこと、働くことの楽しさを実感してもらい、社会性を醸成することに重きを置いているとうかがった。ここまでの記事で「生徒一人ひとりと向き合い個性・特性を見ながらサポートする、生徒に寄り添う」といった内容を何度か書いたが、教員が現場で実践するのは、やはり相当たいへんなことであるようだ。授業は1クラス40〜50人程度で進める集合教育のため、全体の進行を重視して見ていきながら多様な生徒を個々にも見ていくのには、多くの教務経験も必要で労力も要するとのことだ。名情専は1号館、2号館、体育館と三つの建物で構成されている。少子化により世間一般では学生の数が減少しているなかで、名情専は年々生徒が増加しているため、当初はなかった2号館を、2017年に増築した。このことからも、名情専は学校生活や学習に課題を抱えた生徒たちの受け皿になっており、また受け入れた後の教育も評価されているのだと感じた。校内では生徒たちの様子をうかがうことができたが、やはり比較的おとなしくやさしい感じの生徒が多い印象を受けた。授業の合間の休み時間でも、大きな声で談笑している生徒は見かけなかったが、仲よく話をしている生徒は多く見られ穏やかな雰囲気であった。高等課程も専門課程も同じ校舎を利用しているが、制服があるのは高等課程のみのため服装で見分けることが可能だ。また、同校は男子生徒の比率がかなり高い。座学の授業は専門課程の「画像編集」と「就職対策」を拝見した。素直に先生の話に耳を傾けている様子がうかがえた。教室は黒板ではなく電子黒板を活用していた。視覚的に見やすいこと、またメモを取ることが苦手な生徒もいるために、電子黒板を取り入れたそうだ。取材日以前にも一度見学したことがあるが、そのときは企業の方を講師として招いて行う「職業実践講座」を拝見した。仕事や職場を知る貴重な体験として講師の方がていねいに説明をされていた。これまで企業とよりよい関係を構築するために尽力してきた結果がここにも現れていると感じた。取材日当日は、高等課程の試験期間中 を実施していた。学習会は、高等課程のであったため、多くのクラスでは「学習会」取組みで、試験に向けて自習を行う時間校内・授業風景見学高等課程「学習会」の様子専門課程の授業「就職対策」の様子。電子黒板を活用している専門課程の授業「画像編集」の様子働く広場 2024.124
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