働く広場2024年1月号
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だ。名情専では自宅では勉強ができない生徒もいるため、その日の試験が終わった後に高等課程の全員が学校に残り、翌日以降の試験に向けて勉強できるようにしている。自習のため教室では個々に自分が復習したい内容を勉強していたが、そのなかで生徒がほかの生徒に勉強を教えている様子も目にすることができた。勉強ができる生徒が苦手な生徒を教えていると先に記述したが、実際に見ることができたのはよかった。教えられる側だけでなく、教える側もきっとよい経験になるはずだ。最後に、ジョブトレーニングの様子を見学した。専用の作業室が常設されており、さまざまな器具が置かれていた。行っていたのは、まずは小豆をさやから取り出し、選別する作業であった。小豆は生徒たちが畑で栽培、収穫したものだが、働くことの楽しさを知るために選別後は調理して生徒たちで食べる予定だという。自分たちが蒔■いた種が成長して、やがて実となり、それをみんなで食べることは大きな楽しみに違いない。もう一つ行っていたのは業務体験ではなく、不要になった食器を海外に送り、利用してもらうボランティア活動だったが、こういった社会貢献も授業の一環として行っていると説明を受けた。ボランティアといっても、ひび割れや欠けがないかの検品、食器の種類ごとの仕分け、個包装、段ボールへの荷詰めといった内容について、やり方を相談しながら、チームで作業している様子を見ると、実際の業務に通じる内容だと感じた。             またボランティアを行うメリットとして、「相手先からの感謝・お礼のコメントを頂戴するので、働くことの喜びを実感でき、就業への意欲が高まる」との話も聞くことができた。今回の取材を通じて感じたのは、障がいのある生徒もない生徒も、ともに学ぶ「インクルーシブ教育」の一つの答えが名情専にはあるのではないかということだ。名情専が「インクルーシブ教育」を方針に掲げているわけではなく、また専門課程では障がいのある生徒のみが選択できるコースもあるので必ずしもあてはまらないが、障がいのある生徒、ない生徒、障がいはないが悩み・課題を持つ生徒など、さまざまな生徒がともに学んでいる。一般校でインクルーシブ教育を実践しようとすると、障がいのある生徒は「マイノリティ」で「ユニーク」な存在であるために、授業についていけない、配慮が行き届かない、いじめにあうなどの問題が生じるケースがあると聞くが、名情専では障がいのある生徒と、学習面や学校生活での課題を持つ生徒の比率が高いため、そういった生徒に合わせた授業・配慮も行え、学校生活上の問題も発生しにくい。また、生徒たち自身が何かしら悩みや課題を持つ生徒がいることを理解し、勉強を教えるなど、互いに支え合う風土が根づいている。学校側の対応も一人ひとりの個性・特性に配慮しながらサポートし、授業も情報処理などの専門スキルを身につける科目もありながら、普通教科目では基礎から学ぶことも行っている。非常にたいへんではあるが、すばらしい取組みをされていると感心しきりであった。最後に、障がいや不登校などを理由に進学を悩んでいる生徒は全国に多くいるので、このような学校がもっと増えることに期待したい。そうなれば、障がい者雇用の機会も多くなるはずである。最後にさやから小豆を取り出す「ボランティア活動」では、食器の梱包を行っていた「ジョブトレーニング」の様子。小豆の選別作業働く広場 2024.125

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