のある社員が大半でした。しかしいまでは求人募集を出すと、精神障がいのある人の応募が圧倒的に多い状況です。これは40周年を迎えた三菱商事太陽でも同じ傾向にあり、加速度的に精神障がいのある人の新規雇用を進めていかないといけません。三菱商事の直接雇用も含めグループ全体で取り組まなければならない潮目にきています。先にもお伝えした体調管理サポートツールは、いわば「ココロの車いす」だと思うのです。つまり歩行障がいのある方には車いすがあれば、生きづらさや働きづらさはかなり解消される。精神障がいのある方には、このような体調管理サポートツールでセルフケアの力をつけていただく。障がい者雇用の拡大にあらためて取り組む、最初の一歩としてのモデルケースを目ざしています。会社側が就労環境を整えることで、精神障 5は三菱商事に通勤する形で、9人ほどを定着がいのある人が仕事に集中し成果を出していることは三菱商事太陽で実証済みです。今後支援者(ジョブサポーター)とともに集中配置する計画を実行していきます。――これから障がい者雇用を始めようという企業へのアドバイスをお願いします。福元 障がい者雇用においては当事者の「就労準備性」が必要といわれていますが、同じように、雇用する側の企業や組織の「雇用準備性」も大切だと私は考えています。 「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」第四条では、障がい者が「有為な職業人として自立するように努めなければならない」とありますが、これは労働基準法にはない内容です。ちなみに私が三菱商事太陽にいたときも「生きづらさに負けない、働きづらさから逃げない」を理念に、毎日の朝礼で自作イラスト入りの紙芝居を使い、社員も会社も成長し続けるための意識改革が必要だと訴えてきました。ある社員からメールでもらった「社長が本気だということがわかりました」という言葉に押され、いまも個人的に動画を配信しています(※1)。そして本気で働こうとする人のために、このほど改正された同法第五条では、雇用する側もしっかり職業能力の開発をするよう「雇用の質」が求められているのです。障がいのある人を雇用すると、自社の課題が見えてきます。とくに精神障がいのある人にとって働きやすい組織というのは、整ったマニュアルや相談窓口を含め、グーグルが発表した研究結果などで知られる「心理的安全性」(※2)の高い組織のことですよね。障がいのある人だけでなく、LGBTQの人、新卒や転職してきたばかりの人たちも、やさしく受け入れて立ち往生させないための必要なインフラだといえます。互いに本気で取り組んで、職場でよい経験が積み重なっていけば、いつか「それって普通のことだよね」ということに気づくでしょう。最後に、これから障がい者雇用にふみ出すという企業や担当者のみなさんに伝えたいことは、「最初の1人が1年以内で辞めても、落ち込んだり、絶対に現場を責めたりしないでください」ということです。一般雇用だって辞めるケースはいくらでもあるし、ここをふみ台に卒業するケースだってあるでしょう。何度も雇用して、試行錯誤しながら現場は育っていくのです。どうかみなさん、諦めずに前向きに取り組んでください。そうして大小さまざまな課題を解決していった先に、どの社員にとっても働きやすい組織が熟成され、それが会社全体の生産性向上へとつながっていくのをきっと実感できるはずですから。企業に必要な「雇用の質」※2 心理的安全性: 1965年にエドガー・シャインらによって提唱され、その後、エイミー・C・エドモンドソンが発展させた概念。組織やチームのなかで、だれもが安心して率直な発言や行動ができるという状態のこと。2016年にグーグルが発表した「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という研究結果により広まったとされる働く広場 2024.1Leaders Talk
元のページ ../index.html#7