京都市立総合支援学校職業学科3校の職業教育の取組みによる成果京都市立東山総合支援学校の教育課程鳴な滝た養護学校(現在は両校とも総合支援高等学校および特別支援学校高等部学習指導要領(※)に「キャリア教育の推進」が明示されてから十年以上が経過し、特別支援学校においても職業教育のみならず教育活動全体を通したさまざまなキャリア教育の取組みが進められてきた。これまでの特別支援学校におけるおもな成果としては、①さまざまなリソースを活用した地域協働活動の推進、②育成を目ざす「資質・能力」の明確化と授業や教育課程の改善、③児童生徒の内面の育ちをとらえた「キャリア発達」への着目と重視、の3点があげられる。これらの成果をふまえ、現行の小・中・高等学校および特別支援学校小・中・高等部の学習指導要領に「キャリア教育の充実」と明示されており、職業教育に限定しない、小学校・小学部段階からの教育活動全体を通した「キャリア発達」を支援する教育の、いっそうの充実が求められている。京都市では、2004(平成16)年に、当時の京都市立白し河か養護学校と京都市立学校)に職業学科を設置し、企業とのパートナーシップによるデュアルシステムをスタートさせ、職域の拡大を図るとともに、高い就職率を維持してきた。この成果は、全国各地のキャリア教育・職業教育を重視した高等部単置の特別支援学校における一つのモデルとなったといえる。その後、このような十年間にわたるデュアルシステムをはじめとする職業教育の成果をふまえ、京都市立東山総合支援学校(以下、「東山総合支援学校」)は、2013年に白河総合支援学校の分校として開設され、独立した。この間、2014年から3カ年にわたり、文部科学省の「キャリア教育・就労支援等の充実事業」を受託し、職業学科三校合同で「自己肯定感」、「地域協働活動」、「学びの環境のデザイン」をキーワードとした実践研究に取り組んだ。本研究の成果として、①スキルや知識の習得にとどまらない、自己肯定感の向上が学習意欲に影響すること、②地域協働活動が自己有用感や自己肯定感を育む環境であること、③これらをふまえたキャリア発達の視点に基づくカリキュラム・マネジメントにより、社会とのかかわりを見いだし創出する必要性があることの3点があげられた。以上の委託事業による成果は、特別支援学校卒業後に「社会の中で役割を果たすことを通して、自分らしく生きることを実現していく過程」である「キャリア発達」支援における重要なポイントを示唆したといえる。なお、京都市の総合支援学校職業学科の取組みと本事業の詳細については、文献1、2(25ページ)を参照いただきたい。特別支援学校高等部学習指導要領に示されている、知的障害のある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科は、共通教科と専門教科に大別される。共通教科とは、「国語」、「数学」、「理科」、「社会」など、一般的に耳にする教科のほか、独自の教科「職業」が位置づけられており、普通科を設置する特別支援学校高等部では、職業を中核とした各教科等を合わせた指導である「作業学習」を中心に教育課程が編成され、職業教育が展開される。 きらわる 専門教科とは、「家政」、「農業」、「工業」、「流通・サービス」、「福祉」といった職業に関する専門的内容を取り扱う教科をさす。職業学科を設置する特別支援学校においては、専門教科に3年間で875単位時間以上の時数を配当することとしており、専門教科を中心とした職業教育が展開される。東山総合支援学校は、知的障害のある生徒を対象とする高等部単置の職業学科(現在は「地域総合科」という名称)設置校であり、「地域とともに」をコンセプトに、今般の学習指導要領が求める「社会に開かれた教育課程」の中核として「地域協働活動」を位置づけている。東山総合支援学校では、地域協働活動を通してコミュニケーション力の向上をPOINT123※学習指導要領:学校教育法などに基づいて文部科学省が教育課程編成の基準として示すもので、学校において教えるべき教科などの目標や内容などが示されている京都市立東山総合支援学校働く広場 2024.2地域協働活動を通したキャリア発達の「相互性」多様な他者の「求めに応じる」経験対話を通したふり返りによる「意味づけ」21
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