1 食品サービス地域協働活動の意義地域協働活動の実際図るという趣旨から専門教科「福祉」を「地域コミュニケーション」という名称で取り扱っている。地域コミュニケーションでは、地域との「共生」と「協働」によりさまざまな人とかかわり、働くために必要な力を育むことを目的とし、ほかの専門教科の内容をふまえつつ、より実際的な多様かつ豊かな活動を展開している。また、共通教科については、生活のなかで、活きて発揮される力を育むことを目的とし、各教科等を合わせた指導の形態による「表現」、「社会生活」などの学習を進めている。さらには、産業現場等における実習(以下、「現場実習」)で働く経験を通して、社会に出るために必要な力を育んでいる。これらが教育課程の3つの柱(図1)として、有機的かつ実際的に展開されている。地域協働活動は、地域のなかで展開されるさまざまな活動において役割をになうことを通して、生徒が必要とされる実感を得ることにより、自己有用感や自己肯定感を高めることをねらいとしている。ここでは、生徒たち自身が、地域から必要とされるように、自分から動き出すこともねらいとしている。地域協働活動において、生徒たちは自分から進んで取り組むことだけでなく、幼児から高齢者まで、多様な年齢層とのかかわりを通して、しなやかな心が育ち、対応力を高めていく。地域協働活動は、「支援する・される」関係とは異なり、活動を通して「ともに必要とする」新しい関係が構築されていく。生徒たちは地域協働活動を通して自尊感情を高め、主体性や社会性、コミュニケーション力を高め、自己決定する力を身につけていく。言い換えると働くために必要な力を身につけていくのである。地域協働活動は、次に示す四つのサー らよず ビスで構成される。生徒たちは卒業までにローテーションにより、すべてのサービスを経験する。これらの経験が企業で行う現場実習で発揮されるとともに、自身の課題を認識するようになる。そしてこれらをくり返すことにより、日々の学習活動において「なぜ・なんのため」に学ぶのかを意識するようになるなど、本人にとっての学びの必然性につながっていく。このようなリアルな経験の積み重ねにより、生徒たちは自身の適性を考え、三年間で希望する就労先を見つけていくのである。食品サービスでは、食品の製造と販売、接客などを通して地域と連携し、協働活動を展開している。おもな活動は次の通りである。○製菓ケーキやクッキーなどの食品の製造を行う。東山総合支援学校に隣接するフォーシーズンズホテル京都のシェフから技術指導を受け、本格的な洋菓子を製造している。なお、つくっている生徒たちがおすすめする季節のチーズケーキは、絶品である。○カフェしゅうどう月曜日から金曜日の10時に開店し、木曜日は12時まで、それ以外は15時まで営業しており、案内・接客・厨房・レジ業務を行う。地域の住民がリピーターとして多く来店するほか、名所清き水み寺でが近くにあるため、外国人を含む観光客も多く卒業入学学校・地域・家庭で職場で図1 教育課程の3つの柱お手製の英語マニュアル地域協働活動を中心に、自己有用感や自己肯定感を育み、社会の中で向き合うためのエネルギーを蓄える地域協働活動と連動した取組や生活の質の向上を目指した学習を通して、卒業後の自立した生活、余暇活動の充実を図る様々な「働く」体験を通して、自分の進路を自分で決めるカフェには、外国人観光客も多く来店する(写真提供:京都市立東山総合支援学校)「働く」場を知る人間関係形成(自己理解・他者理解)自己選択・自己決定(資料提供:京都市立東山総合支援学校)東山総合支援学校に隣接する「カフェしゅうどう」働く広場 2024.2・「地域とともに」をコンセプトに「自己有用感」「自己肯定感」を育む・自立と社会参加、「働く」ことを目指し、やりたい!を実現する地域との「共生」と「協働」により様々な人と関わり、働くために必要な力を育む◆地域コミュニケーションの学習生活の中で、活きて発揮される力を育む◆表現・社会生活等の学習働く経験を通して、社会に出るために必要な力を育む◆産業現場等における実習就労後の生活の姿を具体的に描く22教育課程3つの柱
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