なぜ・なんのために学ぶかを明確にし、自身の成長をとらえるキャリアデザインおわりに書く、聞く、話す力を高めることを目ざしている。また、「社会生活」では、社会、数学、理科、家庭などの内容を取り扱い、社会のルール、数量の処理、交通利用、集団参加、消費者教育、健康・安全などに関する知識や技能を高めるとともに、生徒たちが卒業後の生活に具体的に活かせるようになることを目ざしている。京都市立総合支援学校では、「個別の包括支援プラン」という、本人を中心とした「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」を一体化したものを、文部科学省が義務化する前から進めてきている。このうち、本校では、本人がかかわるキャリアデザインと称し、その一環として、「事後学習ファイル」の作成を進めてきた。これらは、生徒たちにとっての最終的な目標である就労に向けて、学校での職業教育や各教科を「なぜ・なんのため」に学ぶのか、そのために「何を」、「どのように」学ぶのかを意識化するツールであり、自身の目標に向けてプランニングし、その取組みをふり返り、自身の成長を実感するとともに、到達できていない部分について、共同的に解決していくためのツールである。また、現在作成と活用が求められている「キャリア・パスポート」につながるものといえる。個別の諸計画は、一般的に普段は金庫で管理されていることが少なくないが、事後学習ファイルはこれらと異なり、生徒個人が管理し、いつでも見られるようにして、活用されている。例えば生徒が課題にぶつかったときに、自身のものをすぐに確認できる。また、同様の課題を解決した先輩や友だちの事後学習ファイルを参考にして、解決策を検討することができる。事後学習ファイルの活用によって、地域協働活動や現場実習での実際的な活動経験をふまえ、ホームルーム活動などにおけるふり返りや対話を通して、「表現」、「社会生活」などの授業での学びにつなぐことにも寄与している。このように事後学習ファイルは自身の目標達成に向けた課題解決ツールとして、そして学びをつなぐツールとして本人が活用し、役立てられている。ぜひこれらの取組みを参考としていただきたい。筆者が東山総合支援学校をはじめ、京 リア発達支援であり、「支援する側・さ都市立総合支援学校職業学科にかかわるようになって15年となる。京都市では、本人を中心として地域のなかで役割をにない、自分らしく生きていけるように支援することに尽力してきた。その中核となる取組みの一つが、これまで豊かに展開されてきた地域協働活動である。地域協働活動が示唆するものは、まさにキャれる側」を越えたキャリア発達の相互性である。人口減少や少子高齢化が加速するわが国において、障害のある人が社会参画し、活躍していくということは、障害のない側の意識をも大きく変え、活性化を図ることにつながると考える。まさに社会を大きく変えていく可能性を有するものの一つとして、全国各地で展開されている地域協働活動の動向に今後も注視していきたい。2 『職業学科3校合同研究実践事例集 地域と共に進めるキャリア発達支援』(編著:京都3 『学校のカタチ「デュアルシステムとキャリア教育」』(著:森脇勤、2011年、ジアース教4 「地域協働の中でキャリア発達を促す意味」(森脇勤)、『キャリア発達支援研究1』(編5 「地域協働活動の推進におけるキャリア発達とキャリア開発」(森脇勤)、『キャリア発達支6 「京都市におけるキャリア発達を支援する教育の実践 京都市の高等部職業学科を中心とした今後のキャリア発達を支援する教育の在り方~3校合同研究の目的と方向性~」(森脇勤)、『キャリア発達支援研究3』(編著:キャリア発達支援研究会、2016年、ジアース教育新社)市立総合支援学校職業学科、2017年、ジアース教育新社)育新社)著:キャリア発達支援研究会、2014年、ジアース教育新社)援研究2』(編著:キャリア発達支援研究会、2015年、ジアース教育新社)「修道区民運動会」では、生徒が設営や運営をになう(写真提供:京都市立東山総合支援学校)働く広場 2024.2〈文献〉1 『知的障害教育における「学びをつなぐ」キャリアデザイン ー本人の「思い」や「願い」を踏まえた「深い学び」の実現に向けてー』(監修:菊地一文/編著:全国特別支援学校知的障害教育校長会、2021年、ジアース教育新社)25
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