必要な環境を一つひとつ整備パラスポーツへの注目を共生社会実現への足がかりにそれまでもNTTドコモでは社会人ラグビーチームの活動を支えてきた実績がありましたが、競泳のような個人競技のサポートは初めてのことでした。職場の上司として、山田さんの競技を応援してきた、総務人事部労務厚生担当で厚生担当課長の大■橋■浩■之■さんは次のように話します。 「練習場所やコーチの選び方、強化合宿や大会への参加など、競技をするために必要な環境を、本人と相談しながら手探りで整えてきました。最大限のパフォーマンスを発揮することで、パラスポーツの価値を高めたいという本人の情熱が、競技環境の整備につながっていった最大の理由だったと思います」その後、国際大会で活躍し、会社全体で盛り上がったそうです。 「シンボルアスリートが活躍することで、会社内の一体感が高まるように感じます。同じオフィスで働いている同僚はもちろん、地方での大会の際には、地方勤務の社員もたくさん応援に駆けつけました」と大橋さんは語ってくれました。山田さんは2023(令和5)年9月に現役を引退し、今後は厚生担当として、これまでとは異なる業務にもたずさわる予定です。山田さんは、国際大会で活躍した、社内のだれもが知るシンボルアスリートですが、職場では特別に意識することもなくほかの同僚と変わらず業務に従事しています。最後に、山田さんと大橋さんは、今後のビジョンを次のように語ってくれました。 「水泳に関しては、やり切ったと思っています。近年、パラアスリートを取り巻く環境は飛躍的によくなっていますが、まだまだ十分とはいいがたいものがありますので、今後は、自分ならではの特別な経験を活かして、選手をサポートしたりパラスポーツを盛り上げたりする活動にも力を入れたいと考えています」と山田さん。大橋さんは「パラアスリートとともに歩んだ10年は、企業としても有意義な経験になったと思います。この歩みが、後進のアスリートに道をつくることになるかもしれません。NTTドコモとしても、この経験を活かした社会貢献活動をよりいっそう進めていければと考えています。パラスポーツは、障害のある人に注目が集まる機会です。そのような機会が、障害の有無にかかわらず、さまざまな個性や特性を持つ人たちが、自分の持ち味を活かしながらともに働く社会の実現につながるきっかけの一つになってくれればと思います」と話してくれました。* 次回は、パラアスリートの活躍を支える装具製造などにたずさわる方々にお話をうかがいます。 * * * * パラスポーツ♦ミニ知識♦ さまざまな障害クラスの人が、装具などを身につけずに、肉体のみで水泳を行い競い合います。パラリンピックでは、肢体不自由、視覚障害、知的障害のある選手が対象です。基本的には一般の競泳と同じルールで行われますが、障害に応じてルールを一部変更します。例えば、飛び込みが困難な選手は水中からのスタートが認められたり、視覚障害のある選手にはタッピングバーを使ってコーチがゴールやターンの位置を伝えたりします。大会では、たくさんの仲間たちが駆けつけて応援。山田さんの活躍が社員の一体感を高めてきた(写真提供:株式会社NTTドコモ)山田拓朗さん(左)と上司の大橋浩之さん(右)働く広場 2024.3 ■■■■ パラスポーツの「競泳」とは?11
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