新潟から上京や効率的な操作方法などを指南してもらいました」と高橋さん。また、東京障害者職業センターの配置型ジョブコーチからは、本人との面談を機に仕事全般についての提案もあった。その一つが、コートなどをかけるハンガーの改善だ。「同じ形が並び、自分のハンガーがわかりにくい」との相談を受けた高橋さんは、雑貨店で見つけた小さなマスコット人形を本人のハンガーにつけるなどして解決した。「私たちが気づきにくいことだったので、教えてもらってよかったです」。一方で高橋さんは、2人に対し「50分作業をしたら10分休憩すること」を指示したという。「ずっと画面を凝視して、私たちより集中し続けているはずですから、疲労も大きいだろうと想像できます。長く働き続けるためにも大事なことだと思います」あらためて松坂さんに、職リハセンターを通じた採用を検討する企業へのアドバイスをもらった。 「人事・採用部署だけでなく企業全体として、障害のある方の雇用に関する方針や共通理解があると、より進めやすいと思います。応募者も相談できること・できないことが明確になり、働くイメージもわきやすくなります」初めて障害者雇用を考えるのであれば、ハローワーク主催のセミナー参加や支援機関の見学、活用可能なサービスの確認などをしておくことをすすめているが、「情報収集を目的に職リハセンターを訪問してもらってもよいと思います。見学・相談は随時受けつけていますので、お気軽にご連絡ください」とのことだ。職リハセンターの訓練を経て就職した前述の2人のうちの1人を紹介したい。人事部のAさん(20歳)は、生まれつき視覚障害がある。新潟県内で生まれ育ったAさんは、中学校まで地元の公立学校内の特別支援学級で学び、高校から県内の盲学校に通った。小学生のころからパソコンのタイピングを学び始めていたというAさんは、「盲学校では、私の希望でパソコンをマンツーマン指導してもらっていたので、そのスキルを使って事務職を目ざしたいと思っていたところ、先生から職リハセンターをすすめられました」という。埼玉県所沢市にある職リハセンターで前ま川か恵あさんの存在が、何より大きかったは、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの寮に入ることができ、2021年から1年間通った。 「訓練内容がとても実践的でした。就職活動について何もわからない私に、指導員の先生がビジネスマナーから面接対策まで手厚くサポートしてくれました。自分のペースでスキルを磨きながら簿記にも挑戦し、3級を取得しました」Aさんは、入所半年後ぐらいから就職活動の準備を始め、長所や短所などを自己分析し、就職面接会などに参加するなかで白青舎にめぐりあったそうだ。職場の明るい雰囲気に触れつつ、実習時から案内役をしてくれた、人事部人事担当のという。前川さんは「目の不自由なAさんが職場内で困るかもしれないことについて、私が思いつくかぎりの内容を事前に説明したうえで、それでも困ったときにだれに聞けばよいか迷わないよう、私が窓口担当になりました」とのことだが、親身に寄り添ってくれた社員の存在が、Aさんに「一緒に働きたい」と思わせたようだ。いまでは人事データの集計や求人サイトの求人票メンテナンス、新しい社内人人事部で人事を担当する前川恵さんAさんは人事データの集計などを担当している人事部で働くAさん わやえ 7働く広場 2024.3
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