クや障害者就業・生活支援センターなどから支援者や職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣してもらい、その後も定期的に情報交換をしながら奥野さんたちは支援に尽くしてきたが、昨年秋に退職となった。奥野さんがふり返る。 「本人の体調や状態が悪いときの退職申請は『いまその判断をするべきときじゃない』と止めていました。でも今回は体調が回復するなかで、新しい道を見つけたようでした。次のステージに向けて送り出せたのかなと思っています」マスヤでは2022年5月から、地元の就労継続支援B型事業を行う「南な勢せ就労支援センター」(以下、「支援センター」)と連携した施設外就労の受入れも始めている。週2〜5日、10時から16時まで指導員1人と利用者7人がマスヤの工場に来て、せんべいの入った袋を箱に詰めて糊づけし、賞味期限の印字をするまでの作業を行っている。奥野さんが説明する。 「きっかけは包装機械の老朽化でした。修理もできず、『思い切って終売にしようか』と現場で相談していたのを知った私は、支援センターで箱折り作業もできることを思い出しました」奥野さんの紹介を受けて、マスヤの開発部担当者が支援センターの指導員らと検討を重ね、箱のデザインもリニューアルした。 「新しい箱は、組立て時にワンタッチで開けるようにしたり、糊づけ部分を1カ所にしたりしたほか、賞味期限のハンコを押す作業で手元が少しずれても大丈夫なように、かなり大きなスペースをとっていました。開発部担当者からこのデザイン案を見せてもらったときは、『こんなに彼らのことを考えてくれていたのか』と感動しました」と奥野さんはいう。いまでは現場の従業員から「彼らがいなければ成り立ちません」と感謝されているのはもちろん、支援センターの利用者のなかには「街中の店頭に並ぶ商品にかかわっているのがうれしい」と、マスヤの施設外就労に通い続けている人もいるそうだ。「今後も施設外就労は続けていきたいですし、さらに職場の理解を広げながら、マスヤで働きたいという人がいれば受け入れていきたいと考えています」と奥野さん。マスヤには現在、中途障害で身体障害のある従業員も3人在籍している。このうち1人は免疫系の持病で休職していたが、2020年、在宅勤務の導入によって職場復帰を果たした。管理職として、技術開発の部門で製造ライン仕様の検討やIT化の推進などにたずさわっているそうだ。奥野さんは「ちょうどコロナ禍もあり、職場全体にもリモートワークを広げることができました」と話す。また内部障害がある1人は、設備管理の担当として単独作業をすることが多いため、奥野さんによると「守衛さんたちに協力してもらい、定時終業しているか確認してもらっています」という。 いん 9じっくり時間をかけた研修や、こまやかなコミュニケーションを軸にした支援体制、一人ひとりに合わせた職場環境づくりといった取組みの積み重ねは、マスヤの掲げるミッション「みんなが幸せになれる会社をつくりましょう」にも、着実につながっているようだ。施設外就労で終売回避もみんなが幸せになる会社に賞味期限のスペースが大きく、ハンコが押しやすくなっている南勢就労支援センターによる施設外就労の様子。指導員とともに作業にあたる(写真提供:株式会社マスヤ)働く広場 2024.4
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