になりました。同じように「部品のピッキング作業」や「ボルト検品作業」などにも業務を拡大していきました。障害のある人も操作手順を間違えないよう、作業ラインにはさまざまなトヨタ式「カイゼン」が施され、働きやすい環境を提供していただきました。例えば、「次に作業する内容をランプで知らせる装置」をラインの担当者が自作し、間違いを起こさずに、安全に作業ができるように工夫をしてくれました。このような工夫を実施することは、生産現場の安全性をより高めることにつながります。また、高齢者や女性などにとっても働きやすい環境につながり、将来の人員不足にも希望が持てる展開となりました。生産現場での業務を確実に行ったことで信頼が高まり、補給部品センター(トヨタ自動車大口部品センター)と呼ばれる物流拠点での業務にも進出することができました。補給部品センターでは、車のバンパーやヘッドランプなどのパーツ、ボルトやワッシャーなどの小物部品など、およそ35万の部品を管理しており、部品の注文が入るとすぐに出荷できる体制を整えています。当社の社員は、出荷のために小物部品を梱包する作業などに従事しています。ここでも、「10個単位や100個単位の部品を数えることなく取り分ける治具」を利用するなどして、確実な作業を行い、大きな戦力となっています。さらに、車両の「開発や実験」への協力などの新たな取組みも開始しています。例えば、車いす向けの福祉車両の操作性の評価などに当事者として参加し、よりリアルな検証を実現し、製品の性能の向上に寄与しています。この商品評価を実施するようになってから、トヨタの技術部内でも当事者による評価の重要性が認知され、さまざまな商品の評価や企画参画などの依頼をいただけるようになりました。障害特性が強みになる「障害者だからできる」業務であるため、社員のモチベーションアップにもつながっています。また、トヨタ自動車が運営する総合病院「トヨタ記念病院」における病院業務への取組みも拡大しています。2014年末より病棟の看護補助業務を担当していますが、開始当初は「命を扱う病院での障害者雇用はむずかしい」と反対意見も多く、むずかしい状況がありました。当社から担当者が赴き、業務指導や看護師の理解活動などを地道に行うことで、いまでは安定した業務を実施し、頼られる存在になっています。コロナ禍で病棟勤務がむずかしい状況もあったので、今後は、看護業務以外のさまざまな業務を実施したいとテストトライを進めています。をお願いしていましたが、現在は親会社から「仕事が切り出される」ようになっており、多くの業務依頼をいただいております。それには、親会社の社員を対象に実施している「心のバリアフリー研修」の効果もあると思います。これは、車いすの乗車や知的障害のある社員とのふれあいなどの体験を中心にすえた研修で、企画や当日の運営も障害のある社員が中心になって実施しています。参加者の多くに、障害のある社員を「障害者」としてではなく「トヨタでともに働く仲間」として受け入れる、認識の変化が起こります。により、コロナ禍でも、業務や職域を拡大することができました。2024年4月から障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられることが決まっていますが、今後は数値だけではなく、働く人たちがモチベーション高く活躍できる仕事のあり方や、それを支える制度やキャリアプランを整えることが求められる時代になると思います。障害者への理解が深まり、障害者を受け入れる風土の醸成が進むことを願っています。 研究・実践発表会」のパネルディスカッションⅠ「情報通信技術の活用の進展を踏まえた障害者雇用のあり方について」、パネルディスカッションⅡ「アセスメントを活用した就労支援の今後のあり方について」をダイジェストでお届けします。以前は親会社をまわって「仕事の切り出し」このように、さまざまな工夫を実施すること* * 次号では、「第31回職業リハビリテーション* トヨタ式「カイゼン」で障害者の働きやすい環境を整備「障害者だから」できる業務でモチベーションの向上と持続的な発展へ障害者を受け入れる風土が育った「心のバリアフリー研修」★右記ホームページにて、特別講演の動画や発表資料等をご覧いただけます。https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/31kaisai/kouen.html◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp)有村秀一氏働く広場 2024.429
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