動にも毎回参加するほど「清掃が好きです」と教えてくれた。マスヤでは2014年に奥野さんが障害者職業生活相談員の資格認定講習を受け、その後も2人が受けている。佐々木さんのこれまでの成長のかげには、奥野さんたち支援担当者とのコミュニケーションを軸に、本人の課題克服に向けた努力もあったようだ。課題の一つが、職場に慣れたころから増えていったという当日欠勤だった。山本さんから相談を受けた奥野さんは、佐々木さんと面談し、「どうしたら減らせるだろうか」と案を出し合っているうちに、「ぼくは約束は守るタイプです」との言葉を聞いた。「それなら」と奥野さんは、「毎朝、業務開始前に食堂で私と会う約束にしよう」と提案。さらに「体調が崩れてから休むよりも、あらかじめ月2回の有給休暇を取って、無理せず働けるようにしよう」ともうながした。それから佐々木さんは毎朝、食堂に来るようになった。奥野さんは「今日の朝は何を食べた?」などと軽い会話をして職場に送り出した。佐々木さんは「奥野さんに元気な姿を見せられるように」と、自ら生活改善も始めたという。 「毎朝おにぎりを食べ、果物も買うようになりました。自宅では体を冷やさないよう熱い湯を飲み、ゆっくりお風呂に入るなど体調に気をつかうようになりました」という佐々木さんは、いまは月2回の休暇を取らなくても体調が安定するようになったそうだ。じつは佐々木さんが当日欠勤をする背景には、職場での人間関係の悩みなどもあったようだ。「現場ではいろいろな人たちが一緒に働いていますから、ちょっとした行き違いや不平不満が出てくるのは自然なことだと思います」と話す山本さんは、職場内のトラブル防止策の一つとして「日ごろから、なるべく一人ひとりから話を聞くことを心がけています」という。課題を抱えている人に話を聞くときは、山本さんや松山さん、班長など現場の指導者が2人体制で対応するのがルールだ。3人が互いに同じ距離を保った三角形スタイルで椅子に座って話すようにしている。2人によると「正直に話してくれたことには真し摯しに向き合いつつ、私たちからは、『相手の気持ちになってみたら、どうだろうか』と問いかけることも少なくありません」という。また「少し厳しいことをいった後は、すぐ奥野さんに真意を伝え、別途フォローしてもらうことも忘れません」と山本さん。佐々木さん自身も、いまでは少しでも相談ごとがあれば職場で松山さんに声をかけ、ロッカールームや食堂の片隅で話を聞いてもらっているという。総務本部に出向いて、奥野さんやほかの人に声をかけることもあるそうだ。マスヤの総務本部チームのリーダー補佐を務め、障害者職業生活相談員でもある古こ儀ぎ康こ一い郎ろさんが話す。 「食堂などで会ったときに、佐々木さんから挨拶ついでに質問されることもあります。職場内で困ったことがあるとき、すぐに相談できる人や窓口のような場がいくつもあることで、本人も安心して働けるのではないかと思います」「当日欠勤」減らす策話を聞いてもらう環境うちう ん 7総務本部チームリーダー補佐の古儀康一郎さん気軽に相談してもらうために、食堂の片隅で話すことも多いという佐々木さんも参加する清掃のボランティア活動の様子(写真提供:株式会社マスヤ)佐々木さんの指導にあたる製造チームの松山一巳さん佐々木さんの指導にあたる製造チームリーダー補佐の山本竜也さん働く広場 2024.4
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