ちなみにこのペットボトルの圧縮作業は、定期的に近くの就労継続支援B型事業所にも委託している。ほかの営業所も含め計40カ所以上へ施設外就労を依頼しており、紺野さんは「ほかにも雑誌の付録といった異物の分別など、どうしても手作業に頼らざるをえないような細かい作業は、とても助かっています」という。福島営業所で、もっとも大量に扱われているのが紙類だ。家庭から出る古新聞を束ねたものが、あちこちに山のように積み上げられている。これらを重機のショベルですくって大型機械に投入すると、ビニールの紐や袋などを取り除いた状態でコンベアに流れてくる。そのコンベアのわきに立って、機械が取り切れなかった異物を選別していたのは、2020年入社の蜂は須す賀か健たさん(29歳)だ。蜂須賀さんは中学校在学時に療育手帳を取得し、通信制高校を卒業後はJEEDが運営する福島障害者職業センターで職業準備支援を受けたという。そして5年間ほど運送業でピッキング作業に従事していたが、人手不足による残業続きでける休みも取れなくなったことから退職を決めたそうだ。その後、福島市にある県北障害者就業・生活支援センターに通った際、ほかの利用者や家族と一緒に「こんの」の職場見学に参加し、「いいな」と思ったという。対応した林さんは「当時お母さんから、息子さんの片耳が聞こえづらいことについて相談されました。たくさん質問してもらったのでこちらもやりやすかったですね」と話す。小林さんによると、「ほかの営業所も含めて、特別支援学校の新卒生が入社するときには保護者面談などを行い社会人になるためのフォローもしています」とのことだ。3カ月間のトライアル雇用で選別作業を担当した蜂須賀さんは、「簡単そうだと思っていたのですが、コンベアの動きが速いなかで、いろいろな異物を見つけて取り除かなければならず、瞬発力が必要でした」とふり返る一方、「私はけっこう体が動いてしまうADHD(注意欠如・多動症)の特性があるので、ずっと立ちながら手を動かす作業が向いているとも感じました」という。入社前には「自己紹介カード」も提出した。そのなかで配慮してほしいこともあげている。①「あれ、これ、それ」という指示はわかりにくいので、具体的に説明してほしい。②左側の耳が聞こえづらいので、声かけのときは右側から。③学習障害もあるため、計算や漢字の書き取りがむずかしい、などだ。いまではすっかり仕事にも職場にも慣れたという蜂須賀さんは、周囲に「ハッチ」という愛称で呼ばれ、かわいがられる存在だ。今後は重機の運転資格も取得したいと抱負を語る蜂須賀さんを、林さんは「応援するよ」と激励する。一方で「彼について忘れてはいけないのが、安全面の配慮ですね」と力を込める。 「障害の有無にかかわらずヒューマンエラーはありますが、ハンディキャップを背負っていることで大きな事故につながるようなことには、絶対に遭わせたくありません。彼のハンディキャップのことは、慣れてしまうとつい忘れそうになるので、つねに意識することを肝に銘じています。少しでも危ないことがあったら、すぐにみんなで再確認しています」最後に蜂須賀さんに、ここで働いてい ち 8てよかったことを聞くと、こう教えてくれた。 「ここでは毎月渡される給与明細書に、社長さんからのメッセージ文書がついてきます。ある日のメッセージに、『あるすばやい選別作業働く広場 2024.5蜂須賀さんは、ビニール紐などの異物除去を行っていた福島営業所で働く蜂須賀健さんチームで作業にあたる就労継続支援B型事業所の利用者(写真提供:株式会社こんの)
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