働く広場2024年5月号
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されていました。 しかし現在では、スポーツをすることは生活全般へのモチベーションアップやコミュニケーションをとることによる仲間づくり、社会参加といった意義があるともされています。また、運動不足の解消による健康増進、ストレス発散といったメリットもあり、これは肢体不自由にかぎらず、ほかの障害にも同じような効果があります。視覚障害のある人が行うスポーツは、ブラインドマラソンやブラインドサッカーなどがあります。ブラインドマラソンは、ガイドランナーが視覚障害のある人と伴走します。ブラインドサッカーでは、ガイドが声で選手に進む方向を伝えます。そのほか、2人乗りのタンデム自転車競技や、ガイドがサポートしながら滑るブラインドスキーという競技もあり、いずれも視覚障害のある人は、それをサポートするパートナーと組んで競技に参加します。また、競技大会などでは障害の程度によってクラス分けがされています。ブラインドサッカーは、全盲の選手4人と、視覚障害のない(あるいは弱視の)ゴールキーパーで一つのチームとなり、音の出るボールを使って行う5人制のサッカーです。敵陣のゴール裏に味方のガイドがいて、正確なシュートを打つために、距離や角度、タイミングなどを声で指示します。パラリンピックでは、「ブラインドフットボール」という種目名でアテネ2004パラリンピック競技大会から正式種目(男子のみ)となっています。日本国内の競技人口は約660人(2023〈令和5〉年5月時点)で、ブラインドサッカーのチームは全国で約30チームを数えます。ブラインドサッカーもほかのスポーツと同様、心身を鍛える効果が期待できるとともに、視覚障害のない選手が競技に加わるため、障害の有無を越えたチームとしての達成感も醍醐味といえます。日本ブラインドサッカー協会の職員兼選手の内う田だ佳けさんは、視覚障害があり、高校生のとき友人に誘われて初めてブラインドサッカーを体験しました。怖さよりも「上手にできなかった」という悔しさが大きかったそうです。その悔しい思いをバネにして練習に打ち込み、上達してくると、まわりからプレーを褒められるようになったそうです。「それまでスポーツをして褒められたことがなかったので、とてもうれしかったことを覚えています」と内田いち       さん。ブラインドサッカーは視覚障害のない人がアイマスクをつけて参加することもできるので、同協会では、体験型ダイバーシティプログラムとして子ども向け体験会や、企業向けのチームビルディング研修なども行っています。同協会広報コミュニケーション室室長の源み友ゆ紀き美みさんは「“ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者があたり前に混ざり合う社会を実現する”というビジョンのもと、目が見える見えないに関係なく、お互い支え合って生きる社会をつくることを目ざし、広く啓発していきます」と語ってくれました。なもと初めてスポーツで褒められた視覚障害とスポーツ特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会障害を越えたチームワークづくりを目ざす 2002(平成14)年に「日本視覚障がい者サッカー協会」として発足、2010年に「日本ブラインドサッカー協会」と改称。「スポ育」やワークショップのほか、障害の有無にかかわらず、幅広くブラインドサッカーを体験してもらう活動を行っている。企業向け研修なども手がけており、ブラインドサッカーを通して相互理解を深めるプログラムを実践している。そのほか強化合宿の開催や国際大会への選手派遣など、パラアスリートの発掘・育成においてもさまざまな活動を行っている。日本ブラインドサッカー協会職員兼選手の内田佳さん(写真提供:特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会)働く広場 2024.5取材協力特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)https://www.b-soccer.jp/11

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