働く広場2024年5月号
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学生を対象とした7カ月間の長期インターンシップ「アクセスブルー」を2014年にスタートさせましたが、7カ月間という長期の学生インターンシップは日本では障害の有無にかかわらず例がなく、当時は大学の関係者から参加者がいるのかという懐疑的な声が寄せられました。しかし、障害のない学生は、学生のうちからアルバイトやインターンシップを通じて経験を広げ、問題解決能力を高めているのに、障害のある学生は同じ機会が得られない。それが障害のある学生の就職やキャリア格差につながっていると感じていました。能力の差ではなく、経験の差なのではないかと。インターンシップ期間を長くしたのは、単なる職場体験で終わらせず、最新のIT技術を学んでそれをアドバンテージにしてほしかったのと、失敗から学ぶ経験をより多くしてもらいたかったからです。インターンシップ中には、在宅勤務やチームに分かれた社会課題のソリューション提案の作成、2週間のOJTなど、さまざまなことにチャレンジしてもらい、実体験を通じて学んでいただきます。障害のある学生になるべく早い段階から、ITを活用して自分のQOLを高めることや、親からの経済的、精神的自立を考える機会を創り出し、潜在能力をさらに高めるのです。障害があると毎日の通勤が困難であることも多く、障害のある学生からは在宅勤務を体験してみたいというニーズが開始当時から多くありました。在宅勤務にも個人の向き不向きがあります。それも含めていろいろと体験してもらえれば、従業員になってからも楽になります。日本IBMでは2000年から「eワーク」というリモート勤務や短時間勤務などを全社展開していて、多くの従業員が自分のライフステージやキャリアステージに応じて自分に合った制度を選択できる仕組みを整えてきました。それをインターン生たちにも体験してもらい、自分の個性、障害の特性、仕事のスタイルとマッチングを考えてもらいます。また、仕事にはマルチタスクが求められますので、7カ月の期間のなかで、学業や就職活動、インターンシップとの両立や工夫も経験してもらいます。八重田 梅田 このプログラムは2014年に試行として12人の障害者に参加してもらったのち、2015年からは毎年20人以上の学生が全国から参加し、私が日本IBMを退職した後も継続しています。コロナ禍では完全リモートで参加人数も増加させたと聞いてうれしく思っています。こうした人材開発の企画、実施、モニタリングを定期的、継続的に管理していたことが、いまのEYJapanのディレクターの仕事に活かされていると思います。日本でDE&I専門職の養成は、どの程度進んでいるのですか?正直なところ、日本の企業は人材育成に関してはジェネラリスト育成型で、海外と比べるとスペシャリスト育成のノウハウやジョブ型雇用の市場がまだ成熟していないように思います。特に日本企業ではD&I担当のポジションは女性の管理職登用のためのポストであることが多く、2~3年で担当者が交代してしまい、スキルやノウハウが組織に定着しづらいように思います。D&Iは経営戦略に連動した人材育成の戦略づくりでもあるので、長期的かつ、景気や売り上げに左右されない取組みが必要です。日本IBMではグローバルに縦のラインで専門分野の上司がいて、地域特性に合わせて施策を展開する際に、その上司と連携します。日本IBMの人事部に私の業績評価や昇給を決める人事上の上司がいて、その上司は経営幹部育成プログラ       働く広場 2024.5インターネットを利用したビデオ会議システムで、梅田さんにお話をうかがいました(写真提供:八重田 淳)22

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