ルのような椅子に座って体幹を鍛えながら仕事ができるスペースもあります。現在は、筑波大学のヒューマンエンパワーメント推進局の教授を兼務されていますが、大学との共同研究のような活動もされているのですか?神経学的多様性の考え方をふまえ、筑波大学での研究ユニットでは、多様性のアセスメント研究により、発達障害のある学生のニーズを的確にとらえ、卒業後に社会で活躍できる人材教育とその支援方法や支援ツールの開発といった研究が行われています。筑波大学とは日本IBM在籍時に障害のある学生のインターンシップや女性研究者育成のプロジェクトを通じてかかわりがあり、女性やLGBTQ+、障害者のキャリア開発支援施策を充実させるという立場で教育や研究にかかわらせていただいております。筑波大学での授業以外の研究活動として、発達障害のある学生支援プロジェクト︵RADD︶と、筑波大学インクルーシブ・リーダーズ・カレッジ︵DE&Iに関心のある社会人を対象としたeラーニングとウェビナーによる筑波大学エクステンションプログラム︶にかかわっています。蛇足ですが、大学教員のキャリアとライフの両立支援も大切ですね。ACEの活動やEYJapanでのインターンシップについてもう少し八重田 梅田 八重田 お話をうかがえますか?2013年に大手企業の共同事業体としてACEが設立されたのですが、法定雇用率達成を目的とするのではなく、障害のある従業員の働きがいとキャリアアップの向上を目ざそうというものです。これは企業の成長につながる重要な取組みであり、2010年から日本IBMの研修施設を利用して経営者を対象としたアクセシビリティ・フォーラムを毎年開催しておりました。2017年からは、ACEインターンシップという形で、ACE参加企業が合同でインターンシップの募集やガイダンスを提供し、障害のある学生が複数の企業でインターンシップに参加できる機会を提供し続けています。また、人事担当者および障害のある従業員向けの研修や、「わいがやセミナー」といった障害のある従業員の異業種交流会などを行っています。当事者によるセルフ・アドボカシー(※3)をその人のスキルとして高めることはとても重要ですので、将来のロールモデルとなるような障害のある学生が全国から集まってきますし、他社の同じ障害のある仲間や先輩・後輩と交流する機会です。「わいがやセミナー」も毎回盛況です。またACEの活動のなかでの大きな成果だと思うのはロールモデル表彰です。これはACE参加企業が毎年、自社で専門職としてビジネスやブランド力向上に貢献している障害のある従業員とその事例を推薦し、表彰していく取組みです。梅田 タレントと事例の発掘、共有に大きな役割を果たしています。例えば、ある年の大賞では、バックオフィスで働いていた通信会社の聴覚障害のある従業員が、同じ障害のある友人から手話が通じないので店頭でスマートフォンが買えないという悩みや相談を多く聞いたことから、社内人材公募の機会に店頭販売の営業職に職種転換し、聴覚障害者への売上げを飛躍的に伸ばし、それに気がついた企業側が、主要店舗に手話ができる販売員を配置するようになったというものがあります。こうした会社のビジネスモデルも変えるような事例や人物を発掘し、社会に広げていくというのもACEの掲げている使命の一つです。EYJapanでは、2022年2月に精神・発達障害の方向けのインターンシッププログラムを試行として2週間実施しました。参加者は25人。EYJapanでは、公認会計士、税理士、コンサルタントという高度専門職が活躍する企業ですが、公認会計士や税理士の資格試験は非常に難関で数年かけて資格取得に挑戦しなければならず、日本では女性の比率も低い︵2割程度︶業界です。逆にいうと伸び代があると考え、日本IBMと同じような長期の学生インターンシップが実現できないかと考えました。20校くらいの大学の障害者支援室の担当者にヒアリングを行ったところ、理数系の障害のある学生のキャリアはIT企業によって広がりつつある一方、文系の障害のあ4.高等教育機関との連携 働く広場 2024.5※3 セルフ・アドボカシー:自分に必要なサポートを、自分でまわりの人に説明し理解してもらう「自己権利擁護」活動のこと24
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