る学生の出口がなかなかないといった実情をうかがいました。2週間の試行では、従業員ボランティアを公募したところ、そのなかの数人から当事者であることや、当事者を家族にもつというカミングアウトがありました。このインターンシップを行ったことは、私がEYJapanで障害者雇用施策を考えるうえで大きなターニングポイントとなりました。公認会計士や税理士の資格取得を目ざす学生インターンシップを実現させるためには、経済支援も含めて、いくつかクリアしなければならない課題も明確になったので、一旦、DACでの雇用形態にしましたが、近い将来、必ず実現させたいと考えています。障害のある方が企業などでの競争的雇用を推進されている一方で、福祉的就労についてはどのようにお考えですか?福祉サービスを必要とする方がいらっしゃるわけですから、ご本人やご家族の希望とニーズに見合ったサービスは必要です。ただ、現状では単純作業や定型的な業務が多く、個人がさまざまなことにチャレンジしたり、働き方や働く内容を選択できる状況ではないように思うので、福祉的就労のサービスを提供される支援者の方々ともっと交流を深めたい八重田 梅田 と思います。ビジネス畑出身の就労系障害者福祉施設スタッフが多い事業所も数多くあると思いますが、社会貢献や障害理解についてDE&Iの視点が今後さらに共有されていけば、ビジネスと福祉との間にありがちな壁のようなものが薄らいでいくかもしれません。障害のある方の人材開発を教育機関、企業、福祉が連動して早期から行うことで障害者の働く場を確実に提供することが求められています。最後に、日本の障害者雇用の未来についてお考えをお聞かせください。個人的には、DE&Iの組織や個人への浸透度を測る指標を開発し、企業が障害者の活躍をどの程度応援し、成果をあげているか、もっと可視化されるようになればと思います。障害者雇用のロールモデル企業に対する価値を認めて表彰するなどの仕組みも必要です。今回の取材では、たまたま筆者と同じ 兼務されている梅田氏にお話をうかがう筑波大学でDE&Iにかかわるお仕事を機会を得た。同じ筑波大学といっても私の勤務地は東京キャンパスがメインなので、筑波キャンパスには授業や会議などで行く以外には、あまり「包摂的」にかかわっていないという現状がある。私は筑波キャンパスで職業リハビリテーションを、教育学、心理学、障害科学専攻の学八重田 梅田 生に教える機会はあるが、アメリカのようにビジネス科学専攻の学生や院生に職業リハビリテーションを教える機会というものはほとんどない。例えば、私の旧友の一人がコーネル大学の職業リハビリテーション領域でDE&Iにかかわっていて、ビジネススクールと連携したカリキュラムを提供しているが、受講する方はかなり真剣に勉強しないと理解できそうもないな、というハイスペックな内容という印象を受ける。オンライン受講もできるので、以前個人的に受講登録まで進めたことはあるのだが、授業料や時間的制限という理由から未受講のままである。ならば、日本で同様のカリキュラムをつくって職業リハビリテーションとビジネス科学を融合させればいいのか、などと得意の妄想をしていたところ、今回の取材と重なった。「さて、この先どうする?」というところで相変わらず悶々としているが、ビジネスの世界のことを知らずに職業リハビリテーションをうまく進めることはできない。今回の取材を通じて、「ああ、もっと勉強しよう」という勇気をいただいた気がする。DE&Iと職業リハビリテーションが親戚のようなつき合いに留まっている現状で、じつは同じところを目ざしているのだということを知るとき、それこそ、多様性、公平性、包摂性の意味に少しだけ寄り添うことができたような、そんな心理的安定を今回のインタビューを通して得ることができたように思う。5.競争的雇用と福祉的就労6.おわりに30人以上が手伝ってくれることになり、働く広場 2024.525
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