働く広場2024年5月号
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がなくなるため、病院での清掃業務に就いたが、「屋内で1人で作業する働き方が合わず、つい休みがちになってしまった」ことから2年ほどで退職したという。そして、2017年、54歳のときにハローワークの紹介で「こんの」に就職した。 「いまも基本は1人で作業しますが、周囲に話せる仲間がいるのは以前の職場との大きな違いです。機械を触るのも好きなので、それもよかったですね。地球環境を守るリサイクルにたずさわっているのだと思うと、やりがいもあります」8年目になる八巻さんは、いまも月1回通院しながら、フルタイムで働く。「体力が続くかぎり、働き続けることが目標です」と話してくれた。別の一角では、地元のスーパーなどから回収されてくる大量の使用ずみペットボトルを圧縮する作業が行われていた。大きな袋に入ったペットボトルを、鉄製の箱型機械のなかに投入してからボタン操作で圧縮していく。林さんによると「7袋ほどを少しずつ投入して80~90㎏のブロックが完成します」とのことだ。ペットボトルのリサイクル率は上がっているそうだが、「少しでも新しいプラスチックごみを出さないために、私はマイボトルを持ち歩いています」と林さん。完成したブロックを機械のなかから転がすように出して、頑丈なテープ状のひもで縛しり、専用のラップで全体を包む。最後はブロックを手で押して保管場所に移動させるまでが一連の作業になる。これを1人で行っていたのが塚つ野の由ゆ美み子こさん(51歳)。生まれつきの変形性股関節症で、人工股関節を入れている。2022年、塚野さんは12年ぶりの再就職先として「こんの」に入社した。これまで、食品から衣類、自動車部品などさまざまな製造業の現場で働いてきたが、年齢とともに症状が悪化し、30歳をすぎた頃に人工股関節の手術を受けたそうだ。その後、結婚を機に仕事を辞め、3人の子育てに専念していた塚野さんだったが、末っ子の手が少し離れたのを機に「家      かば  7にこもるのが好きな性分ではないので、思い切って就活を始めました」という。ハローワークから「こんの」を紹介され、翌日には職場見学にも行った。日ごろから家庭で資源ごみを分別してきたが「リサイクルのことをわかっているようでわかっていなかったですね。社会に必要な分野として興味がわきました」とふり返る。入社時から、おもにペットボトルの圧縮作業を担当している。最初のころ、ブロックを手で押しても動かせず困っていたら、気づいた同僚がやってきて「2人で押せば動くよ」と手伝ってくれたのがうれしかったという。 「昔から、親や周囲の人に『足が悪いのだから』といって何をするのも制限されていたのが嫌でした」という塚野さんは「いまの職場では、だれにも『足が悪いから』といわれないかわりに、困ったことが起きるとすぐに助けてくれます。『自分はここにいてもいいんだな』と思えるのです」いまでは1人でブロックを押している塚野さんは「体力づくりの一環ですね」と笑う。林さんは「この作業はノルマがあるわけではないので、自分のペースで無理せずやってもらっています」と説明してくれた。 「私にとって仕事は大事なものなんです。仕事のない日はつまらないんですよね。気持ちにハリが出ますし、ご飯もおいしいです」と充実感をにじませる塚野さん。いまは小中学生の子どもの世話もあるため9時~16時の勤務だが、子どもがもう少し成長したらフルタイム(8時~17時)で働くことが目標だそうだ。「ここにいてもいいと思える」働く広場 2024.5圧縮されたペットボトルを取り出す塚野さん福島営業所で働く塚野由美子さん八巻さんは紙管剥き作業を担当している

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