働く広場2024年6月号
11/36

少しでも負担なく作業をえば、ある部品が低い場所に置かれている。それを手に取るのに毎回しゃがまなければならない。そこで「低い」というピクトグラムを選ぶと「低い。だから、しゃがむ。だったら高くすればいい」という改善方針が出るという具合だ。具体的な改善作業は職員らが担当していたが、従業員から「自分たちもやりたい」との要望を受け、治じ具ぐの試作品などを一緒につくるようになった。むずかしい治具などは、倉敷化工から毎日来てくれる技術部門の社員も加わって、最終的に一番よいものを完成させていくそうだ。改善活動を通して、従業員の予想以上の活躍ぶりにも驚いたと古吉さん。 「人前での発言は大丈夫かなと心配していたら、しっかり自分の意見を主張してくれました。文章を書くのが苦手だという人も、未経験だったからに過ぎないと気づきました。うながせば自分たちでどんどんやっていけるようになり、いまでは改善活動にかかわらず、現場ごとに自然と改善を意識しています」実際の改善例と、働く従業員のみなさんの様子も見せてもらった。まずは成形の前準備の工程。製品に合わせて切り分けられたゴムが大きな機械から出てくるのを受けとめる箱がある。満杯になると17㎏ほどになる。これを四つ積みあげて保管場所に移動させるのだが、女性従業員には箱が重く、毎回職員を呼んで一緒に積みあげていたそうだ。最初はクレーンで吊りおろす方法を考えたが不安定だった。そこで、ひな壇式に箱を並べ、エアー式のジャッキで浮かせてスライド移動させる改善案が生まれた。これによってだれでも1人で負担なく作業できるようになった。愛称は「のせらーく」だ。次に向かったのは、ゴムの性能などを検査する場所。ここでの課題は、検査に使われたゴムを機械の部品から取り外すときにニッパーを使わなければいけなかったことだ。従業員にはニッパーを使えない人もいたので、この作業を担当できなかった。そこで倉敷化工の技術部門の社員が、従業員らと一緒に試作品を何度もつくり、「てこの原理」を活用した簡単なゴムはがし治具を完成させた。「楽にポンっと取れるので『らくぽん』と名づけました」と古吉さんはいう。この治具の開発にかかわった一人が、製造部製造課精錬係の小こ橋ば礼れ子こさん(43歳)。みどりの活動発足のきっかけとなった、JABC活動で堂々と発表した本人でもある。ひまわりの園の元利用者で、入社18年目だ。入社前は、クリーニング工場でも1カ月ほど実習を受けたそうだが「人間関係がうまくいきませんでした。ここでは職員さんがやさしくて、たくさんのことを教えてくれ、覚えられました」とふり返る。入社当初はゴムの秤ひ量り計算をしていたが、いまでは検査室で行う業務をほとんど担当できるほか、ほかの従業員のために作業指示書をパソコンからプリントアウトして配るなど重要な役割も任されている。5年ほど前からグループホームを出て  9     –しい   一人暮らしをしながら自転車通勤をしている小橋さんは、「自立した生活のために、これからも体調管理に気をつけて働いていきたいです」と話してくれた。いまは、企業在籍型の職場適応援助者(ジョブコーチ)の支援を受けながらパソコンのスキょうょう働く広場 2024.6てこの原理を活用したゴムはがし用の治具「らくぽん」ひな壇式に四つの箱が並ぶ。 ローラーにより容易に積み重ねられる「のせらーく」小橋さんはゴムの性能検査を担当している製造部製造課精練係の小橋礼子さん

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る