働く広場2024年6月号
24/36

M■o■delか先を進んでいるな、とたいへん驚きました。帰国後は患者さんのそばの医療現場に戻ることを選び、浜田市に戻りました。人口約5万人の浜田市にある西川病院は、医療機関としての役割だけではなく、『住む』、『営む』、『働く』を運営の基本として地域生活支援を網羅し、グループホーム、地域活動支援センター、生活介護事業所、就労継続支援A型・B型事業所(おもに病院内の業務を担当)、相談支援事業所、訪問看護ステーションなどを運営しています。最近、国は『精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムを普及しよう』といっています。医療と福祉と社会参加、この三つが重なる部分で精神障害者を支えようというコンセプトは非常によいのですが、現状は医療と福祉だけにとどまってしまい、社会参加がむずかしい。ではどのように社会参加すればよいかというと、最もよいのが『一般企業への就職』です。私たちはここに力を入れています」 「現在就労移行で主流の考え方は、保護された訓練環境のなかで、できることを増やしてから就職する『T■■ra■i■nP■■la■c■e』です。安心しながら一般就労を目ざすことができると想定されますが、■- 12345678 ■■■    ■時間がかかる。また、就労移行支援の訓練の場から職場に『移行』したときは、支援者間の連携が大切だといわれますが、上手な連携には相当高度なテクニックが必要で、実際はかなり苦労していると思われます。一方、IPSは真逆で、まずは就労してしまい、支援を受けながら訓練していく『P■■la■c■e-T■■ra■i■nM■o■delIPS支援スタッフは職探しから就労後の支援まで、同じ人が担当する伴走支援のため、引継ぎの切れ目というデメリットがありません」と林さんは説明します。また、IPSには科学的に効果が実証されている八つの原則があります(図)。障害のある人の就労先としては、就労継続支援A型・B型事業所のほか、特例子会社などもありますが、IPSでは一般企業で、ほかの従業員と一緒に働くことを想定しています。福祉的・保護的環境ではない場で、個別支援を受けて働くことも特徴といえます。取材では、週に一度開かれる「清和会IPS就労支援チーム」(以下、「S■・IPS」)の定例ミーティングに同席させていただきました。S・IPSにはスーパーバイザーである林さんのほか、1人の作業療法士と1・25人の精神保健福祉士が在籍しています(1人は他部署と兼任であるため、0・25人換算)。なぜ厳密にスタッフ数をカウントするのかというと、IPSでは1人のスタッフが担当できる患者数が約』です。IPSの特徴西川病院におけるIPSの実際の運用働く広場 2024.6図 「IPS 八つの原則」S・IPSの事務所やデイケアが入る作業療法棟出典:日本IPSアソシエーション(JIPSA)ホームページ(https://jipsa.jp/ips/about-ips-3)S・IPSの定例ミーティングに同席させていただいた競争的雇用に焦点が当てられている 重い精神障害がある人たちは目標を一般雇用において、それを達成することができると考える。仕事探しをいつ始めるのかはクライエントの選択に基づいている 働く準備ができているかどうかの評価・診断・症状・不法薬物の使用歴・精神科病院への入院歴・障がいの程度または刑事罰を受けた過去などによって、働くことを望む人々を排除しない。リハビリテーションと精神保健サービスの統合 IPSプログラムは精神保健治療チームと統合されている。クライエントの好みを尊重する サービス提供はプロバイダーの判断よりむしろクライエントの好みと選択に基づいている。個別の経済的カウンセリング 就労スペシャリストは、クライエントのために社会保障、医療扶助他の公的援助に関する個人用にカスタマイズされ、分かりやすく、かつ正確な情報を得るのを援助する。迅速な職探し IPSプログラムでは就職のためのアプローチとして、長期にわたる職業前評価や訓練・カウンセリングを行うよりもむしろ、クライエントが直接仕事を得るのを助けるために迅速な職探しをするアプローチを用いる。系統的な職場開拓 就労スペシャリストは、計画的に地元の雇用者と接触を持つことによって、クライエントの興味に基づく雇用者ネットワークを構築する。無期限の個別支援 クライエントが望み、必要とする限り、フォローアップ支援は個別に判断されて継続される。22

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る