川■本■悠■大■さん、瀧■山■友■香■さんから、あるミーティングは、林さんの「今週のグッドニュースを教えてください」という言葉から始まりました。支援スタッフの利用者さんが240日間の支援で就労が決定した報告がされました。支援開始から何日経ったのか、全員分が一覧表になっていて、だれが長くかかっているか、そろそろだれが卒業したらよいかを話し合います。月に1回、病院内の各所とのミーティングも行い、次に就労に進めそうな人のリストアップもしていて、45人の定員に空きが出るのを待っている人が何十人もいるとのことでした。それから一覧表を見ながら、1週間で変化のあった人の報告をします。それは職場の話のほか、生活面や病状のこと、転職を考えていることなど多岐にわたっていました。ある一人の利用者さんに、どのような ■■■■■■ 仕事が向いているかも、時間をかけてアイデア出しをしました。まずは、ご本人の希望(日数、時間数、場所、体力的なこと、好み、収入など)を共有し、それを実現できそうな職場をみんなで考えていきます。その際、ついついできないことに目がいってしまいますが、ご本人が保持する強みに着目することが重要だそうです。例えば、特性上、細かい仕事は苦手だったり、膝が痛いという情報もありましたが、両親と同居していて、生活面は安定していること、とても家族思いであること、運転免許証と車を持っていることが共有されました。さまざまな業種のなかから「接客業が向いているかもしれない」という意見も出ました。話にあがってくるすべての利用者さんのことを、医師である林さんがよくご存じで、利用者さんの情報がさまざまな角度から、より深く共有されていました。林さんが担当ではない利用者(患者)さんのことは、主治医にこまめに連絡しているそうです。林さんが全体を把握して、介入の仕方などをアドバイスしていました。とにかく林さんは小さなニュースでも「よかった、よかった」と受けとめておられ、ニコニコとアドバイスをしている姿が印象的でした。S・IPSは開始して丸8年で、2023(令和5)年3月までに2人の就労支援専門員で164人を支援。就労実績は約60%。訪問した事業所の数は369社です。活動は米国IPSのルールに忠実に行っているそうです。病院・事務所で面談をすることもありますが、活動時間のうち、約70%は地域に出かけていくルールです。ある利用者の職場移転で通勤経路が変わったため、バス停で待ち合わせて経路を一緒に確認し、その後は別所(※2)ですので、約1割の企業を訪の利用者の職場を訪問し職場の管理者と面談し、相談に乗ります。午後はハローワークに行って求人と求職者の情報マッチングをする、というような感じです。IPS八つの原則のなかでなによりも重要なのは、本人の「希望」や「好み」を優先することだそうです。「希望」からスタートしたときに、人はやる気が高まり、能力も伸びやすくなるということでしょう。しかしこれには、求職者を受け入れる職場へのサポートも欠かせないと感じています。IPSでは職場への支援も、本人支援とセットで大切にされています。これが、就労準備ができていない利用者が入念な準備をせずに働きはじめても、うまくいく秘訣なのだと思います。先述の通り8年間で2人の就労支援専門員が訪問した事業所の数は369社です。浜田市の総事業所数は3495事業問したことになります。「どのような仕事があるか」や「精神疾患を経験した方を雇用する意思があるか」なども、それとなくヒアリングするそうです。そのうち、働いてくれるならお願いしたいという企業が約半分の47%ありました。これは大病院と地域をつなげる活動働く広場 2024.6※2 総務省「平成26年経済センサスー基礎調査」(2014)S・IPS就労支援専門員で精神保健福祉士の瀧山友香さんS・IPS就労支援専門員で作業療法士の川本悠大さん20人と決まっているからだそうです。23
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