Modellace 森川さんは豆腐工場で、レーンに流れてくる豆腐を、一つひとつ手に取り、へこみ、崩れ、印字ミスがないかを目視し、パレットに並べていく作業を行っていました。豆腐は一定の速さで流れてくるので、手を休めることができません。水分が多いものなので、パレットも重いと思われます。気の抜けないたいへんな作業だと感じました。 「森川さんは勤続30年のベテランですので、工場のどんな仕事もこなせますし、みんなが敬遠しがちな仕事を率先して引き受けてくれる頼もしい存在です」と、説明してくださる石田さんの言葉から、従業員との信頼関係を感じました。高橋さんは、S・IPSから石見食品のことを聞き、応募し採用されました。取材時は揚げ物をつくる場所で、パレットの洗浄などを行っていました。豆腐製品の製造は、いくつもの工程があるので、ベテランの先輩方に教えてもらいながら、すべての工程を覚えるのが目標で、定年まで勤めたいと力強く語ってくださいました。石見食品はS・IPSだけでなく、地域のさまざまな支援機関とつながり、障害のある方の就労先としての門戸を広げています。徐々に高齢化していく地域のなかで、一定の配慮が必要であっても、工場で活躍してくれる人の存在はとても大事だということです。社是は「作ることへの喜びを感じ、働くことへの生きがいを感じ、感謝の気持ちを大切にしよう」です。障害のあるなしにかかわらず、採用の際の大切な基準は、「挨拶ができる人」とおっしゃっていました。たとえ仕事ができたとしても、挨拶ができない人は、職場で孤立しがちになる、と石田さんはじつによく全従業員を見ておられます。同社は2023年11月22日に、島根県内で13番目となる、「もにす認定(障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度)」を受けられました。浜田圏域では第1号認定となります。西川病院などの取組みの成果として、浜田圏域では、障害者雇用を行う事業所が増えていますが、そのなかでも同社はリーディングカンパニーとしての役割をお持ちなのではないか、と感じます。障害者雇用を、西川病院のような医療 -P ようになり、ハローワークからの声かけ機関が率先して広げているのはとても珍しいケースで、浜田圏域の可能性の大きさを感じます。企業交流会も開催されるなどもあって、同社をはじめ多くの企業が集まっているそうです。支援機関連携のほか、気軽に相談し合えるような会社同士の連携があれば、地域としてさらに障害者雇用が進んでいくものと思われます。私は企業側の人間として、IPSは専門家が行うもの、むずかしいものという先入観があり、苦手と考えていました。しかし今回の取材で、当事者支援と企業支援がセットだと学び、「Train」の連携のむずかしさを解決できるものだという可能性を感じました。1社だけではなく、地域として精神障害者雇用が浸透していくことの相乗効果もあり、そのけん引役を病院がになっていることもすばらしい取組みでした。もちろん、就労できる人が増えれば、元気になる人も増加しますので医療費の削減にもなります。利用者にとって、就労は決して簡単なことではありません。「『やれんねー』と思うこともたくさんある」と、S・IPSでお聞きしました。しかし、うまくいかないことがあっても、「『どうねー、どうねー』といいながら、利用者の斜め後ろからついていく支援」と話していた林さんの言葉から、利用者の幸せを願う温かな思いを感じる取材となりました。もにす認定、地域での役割おわりに働く広場 2024.6高橋さんはパレットやラックの洗浄などを担当している豆腐工場で働く高橋貴弘さん25
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