働く広場2024年6月号
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きこえる人と同じ競技を楽しむ聴覚障害とスポーツ卓球の練習をしています。樅山さんが卓球を始めたのは12歳のとき。「短い時間でもスポーツに触れる時間をつくって楽しんでほしい」という父親の思いもあって、毎日のようにスポーツセンターを訪れていたそうです。練習を重ね、24歳になったいまでは、知的障害者参加の卓球大会のみならず、一般の卓球大会に参加するまでになりました。練習に励みながらも「卓球は楽しい」と話してくれました。スポーツセンターには、常時10~20人程度の職員が常駐し、利用者をサポートしています。 「最初はうまくできなかった人が徐々に上達していくのを見て一緒に喜んだり、『次はここまでやってみましょうか?』などアドバイスしながら、少しずつできることを増やしていけるようお手伝いしたりしています」と、職員の石い巻ま詩し織おさんは話してくれました。利用者にとってもスポーツを一緒に楽しんでくれる職員のバックアップは、大きな励みになっているようです。聴覚障害のある人は、ほとんどのス    きとじりきしおらポーツを障害のない人と一緒に行うことができます。マラソンなどの陸上競技や水泳、サッカーやバレーボール、空手などのスポーツに参加が可能です。聴覚障害のある直な紀きさんは話します。人とともにスポーツをする場合、伝えたいことは、ランプや旗などを利用したり、ジャスチャーなどを工夫したり、目で見てわかるようにします。 「聴覚障害のある人の身体動作の自由度は、きこえる人と変わりません。そのため、きこえる人と同じ競技を楽しんでおり、選手として一般の競技に出ることも珍しくないと思います」と、一般財団法人全日本ろうあ連盟デフリンピック運営委員会事務局長の倉く野の 「聴覚障害のある人がスポーツを始めるきっかけは、保護者からのすすめや、家族・友人がやっているのを見て始める人、学校のクラブ活動、またはスター選手に憧れてなど、一般の人がスポーツを始めるきっかけと大差はないと思います。選手で活躍している人のなかには、アスリート雇用で企業に勤めている人もいらっしゃいます」と倉野さん。活動の場は広がっています。 2025年に「第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025」が開催されます。デフリンピックは、聴覚障害のある当事者が運営する国際大会です。大会のビジョンの一つに「“誰もが個性を活かし力を発揮できる”共生社会の実現」が掲げられています。 「『共生社会』とは何かということを示し、社会を変える大会にしたいと考えています」と、デフリンピックへの思いについても、倉野さんは話してくれました。  *  *  最終回となる次回は、この連載をふり返り、第1回執筆者の日本福祉大学教授の藤ふ田た紀も昭あさんに、パラスポーツについて総括していただきます。*  *  *  働く広場 2024.6取材協力(左から)父親の樅山さん、駿さん、スポーツセンター職員の石巻さん卓球の練習をする樅山駿さん 2025年東京で開催される東京2025デフリンピックに向けて、一般財団法人全日本ろうあ連盟の内部に設置された組織。自治体や関係機関と協働しながら、大会準備を進めるとともにデフアスリートやデフ競技について周知啓発を行っている。27一般財団法人全日本ろうあ連盟 デフリンピック運営委員会〒162-0053東京都新宿区原町3-61桂ビル2FTEL03-6302-1448https://www.jfd.or.jp/sc/deaflympics

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