働く広場2024年6月号
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〜職業生活からの引退の傾向〜就業状況障害者の就労支援は、就職までの支援にとどまらず、職場定着、就業継続、さらに職業生活からの引退といった「職業サイクル」全体を支えることが、ますます重要になってきています。そのような課題には、障害種別等による違いだけでなく、年齢に応じた体力や生活状況等の変化、さまざまな制度、サービス、職場環境の変化を経験してきた世代間の違い、経済状況等の全般的な社会的動向等、さまざまな要因が関連する可能性があります。当機構の障害者職業総合センター研究部門では、「障害のある労働者の職業サイクルに関する調査研究」アンケート調査において、2008(平成20)年度から16年間の長期継続調査(パネル調査)として、障害者の就職、就業継続、離職の各局面における状況と課題を把握しており、2023(令和5)年現在、14年目までの調査結果を集計して、長期継続調査データに基づいて、職業生活からの引退についての分析を行いました。その結果、以下に示すように、障害種別によって中高年齢期の就業継続の意向や就労率が異なっていることが示唆されました。企業における雇用管理の改善や今後の施策展開においても、世代や年齢の違いも考慮したきめ細かな支援ニーズの理解がいっそう必要と考えられます。本調査においては2008年度の開始時に就      それぞれ2年ごとにアンケート調査を行い追跡業していた障害者について、40歳未満の「前期調査」グループ、40歳以上の「後期調査」グループを設定し、その後の就業状況にかかわらず、しています。開始から14年を経て一部調査対象から外れた調査対象者もいますが、第1期から第7期までの全回答者1126人の延べ4912件の回答を得ており、調査時点の就労状況が不明の者および年齢が不明な者を除いた4878件の就労状況のデータを得ています。アンケート調査の内容は、障害者の職業生活を幅広くとらえる観点から、調査対象者の基本的な属性に関すること、職業に関すること、職業以外の生活における出来事等に関する質問と満足度等の意識に関する質問により構成しています。また、前期調査、後期調査とも同一の内容、調査対象者個人の変化を確認するために、基本的には第1期の調査から共通としていますが、時勢の変化を踏まえた質問の追加等も一部行っています。査と後期調査を合わせて視覚障害者103人、聴覚障害者208人、肢体不自由者225人、内部障害者107人、知的障害者263人、精神障害者103人、計1009人を対象に実施しました。うち577人から回答(回収率57%)を得て、回答者の平均年齢は、「前期調査」グループは40・5歳、「後期調査」グループは58・9歳でした。けに影響されるのではなく、世代別の影響も強いため、長期継続調査(パネル調査)では、出生年によるグループ(以下、「コホート」)別の集計が重視されます。今回の分析では、回答者を生年により10年ごとに分けたコホート(1950年代生、1960年代生、1970年代生、1980年代生)別に、2年ごとの7期分の就業状況の変化を集計しました(図1)。期に57歳から67歳となることから、それ以降に就労率が低下していました。1960年代生まれ以降のコホートでは第7期でも最高齢が61歳であることもあり高い就労率を維持していました。1950年代生まれのコホートを、障害種一般に、集団の行動様式等は、単純に年齢だ全体としては、1950年代生まれでは第5障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門1 はじめに2 調査の概要3 就業状況の経年変化(図1)働く広場 2024.614年目の調査となる第7期調査では、前期調2814年間の追跡データから見た障害者の

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