わかお井雅弘い 田真だ5――競技を通して印象に残ったことがあれば教えてください。小倉――小倉さんは今年から、技能人財養成部で指導する立場になったそうですね。小倉 ――最後に、アビリンピック出場を考えている人へのメッセージをお願いします。小倉 競技中、説明書に配線の色の指示がないことに気づき、フランス人のチーフ審査員に直接、身ぶり手ぶりで質問してみました。すると彼は手をくるくるさせたジェスチャーをし、それが「なんでもOK」という意味だとわかって「通じ合えた!」とうれしくなりました。国際アビリンピックを通して、言葉は通じなくても心が通じればだれとでも交流できること、人と人がつながるすばらしさを実感できました。また、さまざまな障害のある選手たちと競い合うなかで、私には聴覚障害があるゆえに「視覚能力が長けていること」を再認識できました。間違い探しが得意で、細かい部品やはんだづけの善し悪しをすぐに判断できるという私なりの力をおおいに発揮できたと思います。他国の選手たちとは、競技後に健闘をたたえ合ったり、自分から呼びかけて記念写真を撮ったりしたのがよい思い出です。日本選手団でも、聴覚障害があり「歯科技工」種目で金メダルをとった中な川が直な樹きさん(※4)と話す機会があり「いいものをつくるには、どうしたらいいか」という話題で盛りあがりました。モノづくりを楽しむ気持ちやこだわりなど、互いに共通する部分や新たな気づきもありました。おもにアビリンピックを目ざす後輩たちを指導していきます。特別な経験をさせてもらった恩返しという意味でも、自分の経験やスキル、モノづくりの楽しさ、そして人とかかわり感謝することの大切さを伝えていきたいですね。私自身の指導力もレベルアップさせていくつもりです。先日は、聾学校の生徒さん向けにデンソーが開催した体験会で、プログラミングを教える機会がありました。何もできないところから、できるようになっていく生徒さんの姿にうれしくなりました。あらためて自分は人に教えることが好きなのだと実感しています。私自身、初めての地方アビリンピックでは課題がとてもむずかしく感じ、国際アビリンピックなんて夢の話だと思っていました。その後も本当は、あきらめそうになったときもありましたが、職場のみなさんに助けられました。やはり「継続は力なり」です。途中で挫折しても努力を続けていけば大きな力につながっていきます。なにより「できない」が「できる」に変わると、見える世界が広がります。ぜひみなさんも挑戦を続け、みなさんにしかできない経験をしてください。自分の﹁視覚能力﹂再認識モノづくりの楽しさを株式会社デンソー技能人財養成部技能研修開発室長よこ横さんひろまさ株式会社デンソー技能人財養成部技能研修開発室技能研修課担当係長その園史さんまさし次回の「メダリストを訪ねて」は、次号(2024年7月号)に掲載予定です。お楽しみに‼働く広場 2024.6聾学校の生徒向けに開催された体験会での一コマ。プログラミングを指導した(写真提供:株式会社デンソー) 自動化が進む現場では電子機器組立の作業はほとんどありません。それでもアビリンピックに参加する理由は、正しく安全に作業することや部品の整理整頓、作業改善など「モノづくりにおいて大事なこと」を教えるにはとても優れた競技だからです。「内発的動機づけ」にもつながるアビリンピックには、今後も社員にどんどん挑戦してもらいたいですね。※4 本誌2023年11月号の「メダリストを訪ねて」で中川直樹さんにご登場いただいています。https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202311/index.html#page=4 聴覚障害のある常駐の専門講師は小倉さんが初めてです。私たちは今後、障害のある社員がアビリンピックだけでなく、社内でもっと活躍していけるよう新しい研修プログラムを検討していきます。小倉さんには、実直さや好奇心旺盛さ、前向きな姿勢を崩さず、後輩たちの挑戦を後押しする存在になるよう期待しています。職場の方より〜第10回国際アビリンピック〜メダリスト
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