されるほど欠かすことのできない存在です。半田さんの代わりを務めた従業員は作業に苦労していましたね。あらためて半田さんは、なくてはならない戦力だと実感しています」と話してくれた。モップ洗浄作業は、もともと専任の業務ではなかったそうだ。現場でモップを使う従業員が、それぞれ手作業で1本ずつ洗浄していたが時間と手間がかかっていた。そこで高圧洗浄機が使える場所を確保し、モップ洗浄だけの業務をつくったことで、全体の作業効率が大幅にアップしたという。筒井さんが話す。 「こうした分業は、障害者雇用のためというのではなく、さまざまな作業で実践されてきました。広い院内を回ってごみ回収だけをする従業員もいますし、逆に、掃き掃除やダスター干しなどを互いに手伝うこともあります。病棟の清掃業務は、ごみ回収から掃除機、拭き作業、モップ洗いまで1人で担当すると結構な重労働なので、分業を効率よく組み合わせていくようにしています」聴覚障害のある岡お野の智と子こさん(33歳)も、 かも 9 半田さんと同じく入社13年になる。地元の聾学校を卒業したあと、父親の勤務先でもあったという四国管財に入社した。最初は、障害のない人たちとのコミュニケーションや指示内容がわかりにくかったことに苦労したそうだが、いまでは相手の口の動きを読み取り、いつも持ち歩いているメモを使って筆談も交えながら意思疎通を図っているそうだ。朝は病院職員向け食堂の掃き・拭き掃除などをしてから、休憩室や病棟内の清掃の応援に向かう。その後は宿直室の清掃とベッドメイキングをこなし、午後は職員更衣室の掃き・拭き掃除、病棟内のごみ回収、建物の外回りの掃除まで行う。「さらに時間が余ったときは、私にメモで『なにか手伝えることありますか?』と伝えてくれます」と中平さん。ちなみに岡野さんは毎日、業務が一つ終わるごとにメモに「済」マークをつけて中平さんに見せて確認してもらっている。「彼女にとっては、作業の一つひとつを目に見える形で確認してもらうことが、精神的な安心感につながっているようです」と話す中平さんは、全体として職場で心がけていることも「声がけ」だという。 「なかでも障害のある従業員には、たびたび声がけをします。特に1人で作業をしているときに近くにいる人が『お疲れさま』、『大丈夫?』、『何かあったらいってね』などと一言かけるだけで、安心して働けるようですね」この日は、病棟の宿直室(4部屋)の清掃業務を見せてもらった。基本は1人での作業だという。まず部屋のごみ箱を廊下のドア脇に置く。何かの理由で作業中の従業員がその場から離れても、まだ掃除が終わっていないことを知らせる目印だという。その一方、もしドアが閉まった状態で「在室中」の表示になっている清掃予定の部声がけが安心感に宿直室のベッドメイキングを行う岡野さん清掃部門で働く岡野智子さん働く広場 2024.7
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