「会社ぐるみの多少おせっかいな職場で働いてきた私たちとしては、なんの違和感もなく3人の家庭とも親密にかかわってきました。逆にそうした日ごろからの意思疎通がなかったら、何かあったときに双方に誤解が生じやすくなります」と筒井さん。従業員同士のちょっとした口喧げ嘩かなどささいなトラブルがあったときは、家庭から心配する電話がかかってくることもあるが、筒井さんが事情を説明すると安心してもらえるという。また職場では、毎日10分程度行われる全員参加のミーティングも重要だという。日によって指名された従業員が、入社時にドリームカードに記入した「私の夢」の進捗状況や身近な目標、新たに目ざしていることなどを自由に発表する場をつくっているそうだ。筒井さんが話す。 「コロナ禍で一時中止になっていましたが、予想以上に従業員同士の距離感ができてしまったようで、職場の雰囲気も悪くなり、実際に小さな行き違いも起きました。日中は各現場でそれぞれ働いているだけに、たとえ短い時間でも一堂に集まって、互いにコミュニケーションをとることが大事なのだと再認識しているところです」職場内のコミュニケーションを大事にしているという四国管財は、独自の報連相(報告・連絡・相談)システムを「ラッキーコール」と呼び、取り組んでいる。現場で見つかった問題は改善できるラッキーなことだとプラスにとらえた考え方で、顧客からの報告だけでなく、従業員自ら現場での失敗やミスも申告するという仕組みだ。年間300件ほどのラッキーコールのうち9割以上が従業員からだという。四国管財は「クレームを起こしたときに一番不安なのは従業員自身である」として、「どんな小さなことでも会社が対応することによって働きやすい環境をつくり、クレームに誠心誠意対応することで顧客との関係が深まり、会社として成長できる」としている。筒井さんたちの現場でも、本人が少しでもいいやすい状況にするため、事前に「どんな失敗をしても、その先は会社側の問題なのだから、隠さず、ウソだけはつかないでほしい」と話しているそうだ。(※1)や企業在籍型職場適応援助者(ジョ実際に小さなものも含めて年間50件ほど上がってくるが、「多いのは道具などが壊れたケースで、ほとんど経年劣化が原因です。そういう小さなことも含めて申告しやすい環境が、安心して働きやすい職場につながっていると思います」とのことだ。最後に、目下の課題について筒井さんにたずねたところ、「採用や雇用にかかわる一般的な知識が足りないなと感じ始めています」との答えが返ってきた。いまも特別支援学校などからの依頼で職場実習を受け入れたり、就職希望者の実習を行ったりしているそうだが、「さまざまな障害特性を持った人たちに対応するなかで、やはり、コミュニケーションだけではカバーしきれない部分もあるなと思うようになりました」と筒井さん。まずは、当機構(JEED)が実施している障害者職業生活相談員資格認定講習ブコーチ)養成研修(※2)の受講を検討しているという。 ん 今後も、従業員一人ひとりの長所短所を見きわめ、職場のみんなで助け合いながら、業務全体の効率と質の向上を目ざしていくそうだ。﹁ラッキーコール﹂※1 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04/koshu.html毎日行われるミーティングの様子。貴重なコミュニケーションの場にもなっている(写真提供:四国管財株式会社)※2 https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/job_adapt02.html働く広場 2024.711
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