働く広場2024年7月号
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であり、入校月は4月、7月、10月、1月と年4回設定されている。また、この就業支援科自体は3カ月で終わるが、修了後、6カ月訓練の調理・清掃サービス科とオフィスワーク科のいずれかへの連続受講も可能となっている。なかには就業支援科のみで就職する人もいるものの、ほとんどの人が調理・清掃サービス科やオフィスワーク科に進むようである。具体的な訓練内容としては、標準時限数が定められており、社会生活スキル演習(コミュニケーション、ロールプレイ)や問題解決技法などを行う社会生活技能実習(120時限)、事務作業・調理作業・清掃作業を行う適応実習(124時限)などで構成され、計300時限となっている。SST(Social Skills 社会生活技能訓練)も訓練の一環として行われているなか、毎日、心身の状態を確認する「健康チェック」も実施している。このように職業準備性を高めることを意識した訓練となっている。この就業支援科を経て、調理・清掃サービス科やオフィスワーク科に進む場合は、その科の担当指導員へ、就業支援科の指導員からきちんと申し送りを行っているとのこと。就業支援科には、ここから訓練をスタートさせる「導入訓練」の側面があり、東障校側としては当該訓練生のアセスメントをする場ともなっているようである。Training:智■充■さんからお話をうかがうことができ一方で、精神障害や発達障害のある訓練生はほかの科にもいる。そのような科では、職業準備性は扱われないのか。興味深いエピソードを、ビジネスアプリ開発科の職業訓練指導員で課長代理の山■口■た。ビジネスアプリ開発科はIT(情報技術)を活用できる事務職を目ざすために、事務に必要なオフィスソフトやプログラム作成まで幅広く学習するとともに、パソコンをその仕組みから理解することや、実践的なコミュニケーション能力を体得することを目標とする1年間(訓練時間1560時限)のコースである。具体的には4月の入校後、9カ月程度は基礎的なことを学習し、最後の時期である1月以降では、4〜5人で一つのグループをつくり、お互いに意見を出し合いながらアプリケーションをつくりあげるという活動を行っている。東障校側としてはグループは組むものの、基本的には、グループ内での役割分担やディスカッションの方法などは、方法論として授業で教えたうえで、あとは自分たちで進めてもらうそうだ。以前のグループ活動において、精神障害のある訓練生のなかに、リーダー役となったものの、「ほかの人に仕事を割りふって本当によかったのだろうか」と、後悔をしてしまう人がいたそうである。つまり、自分を責めてしまうような形になってしまう場合があるようだ。そのような場合、訓練生に基本的には任せつつも、「こういうときの議論はこういうふうに持っていったほうがいいんじゃない」、「言い方をこういうふうにしてみたらいいんじゃない」と本人が気づけるようにアドバイスを行っていくという。そのようなアドバイスは、そのグループのメンバーがいるなかで行うのではなく、休憩時間などにタイミングを見計らって、「ではリーダーの人は来てください」というような形で話すようにしているとのこと。このエピソードを聞き、これはまさに    ■■■■    職業能力開発校ならではの強みであると感じた。訓練基準で定めたカリキュラムに基づき、習得してもらいたい内容(学習課題)がきちんと設定されていること。そして、グループでのアプリケーション開発活動という自然な流れのなかで、ロールプレイやふり返りが巧みに設定されている。また職業訓練指導員のかかわり方ビジネスアプリ開発科における最終段階でのグループ活動就業支援科の職業訓練指導員で課長代理の小林克子さんビジネスアプリ開発科の職業訓練指導員で課長代理の山口智充さんものづくり技術科の職業訓練指導員で主任の高岡幸三さんものづくり技術科では、3Dプリンタで製作された作品が展示されていた。作品が置かれている溶接台も授業で製作したもの働く広場 2024.723

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