も一方的に教えるというものではなく、考えさせるように誘導するものであり非常に絶妙である。山口さんが、ある修了生に一番印象に残った授業は何かをたずねたところ、このグループ活動だという回答があったとのことだ。グループ活動は、職業能力開発校という、ある意味落ち着いて取り組める場で練習を重ね必要なスキルを身につけることができるため、就職してからもその経験を活用することができたということであろう。非常に納得できるエピソードである。続いて別の日に、発達障害者の訓練コースを設置している一般の職業能力開発校においてはどのような状況なのかを知りたいと考え、石川県立金沢産業技術専門校ワークサポート科の職業訓練指導員である西■田■信■一■さんに、オンラインで取材させていただいた。石川県立金沢産業技術専門校(以下、 ■■■ 「専門校」)は、石川県金沢市に位置しており、総合建築科、メカトロニクス科、電気工事科、ワークサポート科の四つの学科がある。このうち、総合建築科、メカトロニクス科、電気工事科は特に障害者対象ということではなく一般的な職業訓練が行われている。一方、ワークサポート科では知的障害をともなわない発達障害者を対象とした職業訓練が行われている。なお、このワークサポート科は発達障害者を対象とした職業訓練としては県内唯一のものである。もともとワークサポート科は、2009(平成21)年度から厚生労働省のモデル事業として開始され、当初は9カ月の訓練であったが、2012年度からは6カ月の訓練となって現在に至っている。前期・後期の年間2回の入校となり、各期の定員は5人(年間10人)である。訓練生は、職業能力開発校であるため、ハローワークからの紹介で応募する。実際に入ってくる訓練生は、西田さんの印象としては、高校や大学などを卒業してすぐに入校する人は少なく、一度、障害があることを明かさずに(あるいは自覚せずに)一般就労をしたもののうまくいかなかったという経験を経て、ワークサポート科に入校するという人が多いとのことであった。なお、ワークサポート科の対象地域は県内全エリアであるが、金沢市や加賀市といったエリアからの入校者が多いとのことであった。ワークサポート科の目標は、知的障害をともなわない発達障害者を対象に、一人ひとりの能力や特性に配慮しながら、技能訓練および社会訓練を行い、その人に合った就労と社会的自立を支援するというものであり、具体的には「職場で必要なパソコンの基礎知識・技能の習得」、「物流管理における基本知識・技能の習得」、「コミュニケーションスキルやビジネスマナーの向上」、「社会生活に必要な基本知識や技能を学び、自立をめざす」という内容だ。またこれらの目標達成のために、東障校と同様、標準時間が定められており、導入訓練20時間、基礎訓練378時間、応用訓練316時間となっている。知的障害をともなわない発達障害者が訓練の対象となっているが、精神障害者保健福祉手帳の所持は必須の応募要件とはなっておらず、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)など発達障害として医師に診断された人を対象としている。職務遂行技能を高める内容としては、「パソコン訓練」や、外部講師による指導のもと「清掃訓練」、「筆耕実務(美しい字の書き方の練習など)」などが行われている。一方、「基礎体力養成(2〜3㎞ のウォーキングなど)」(115時間)、「コミュニケーション訓練」(51時間)、ワークサンプル幕張版(※2)などを用いたアセスメント・作業体験である「個別指導」(50時間)なども行われており、職務遂行技能だけでなく職業準備性を高めるよ石川県立金沢産業技術専門校をオンライン取材ワークサポート科の概要ワークサポート科における訓練の実際※2 ワークサンプル幕張版(MWS): JEEDの研究部門が開発した、障害のある人の職業能力を評価したり、作業上必要となるスキルや補完手段の方法などを把握石川県立金沢産業技術専門校ワークサポート科職業訓練指導員の西田信一さん(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校)し支援したりするためのツール(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校)石川県立金沢産業技術専門校働く広場 2024.724
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