働く広場2024年7月号
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うな指導も行われていることがわかる。また履歴書の書き方や職場実習などの就職支援活動にも力を入れており、職場実習については10日間のうち、4回は巡回に指導員が出向くとのことであった。このような取組みで訓練するなかで、多くの訓練生が対人面などでの対応力がついていっていると感じていると西田さんは語っていた。一方で、6カ月の訓練で、例えば、訓    しない(クローズ)で就職することを希練生の自己理解などがどの訓練生でも十分に深まるかというと、むずかしい場合もあるとのこと。これまでむずかしかったケースとして、障害があることを開示望した人もいて、就職活動支援に苦慮したことがあったそうである。専門校としては、先述したように訓練生のなかには障害があることを明かさずに(あるいは自覚せずに)一般就労をしたもののうまくいかなかったという経験がある人も少なくないため、なるべく障害を開示して企業にきちんと伝え、合理的配慮を受けながら働くことをすすめているとのことである。このようなこともあり、西田さんは「6カ月間の訓練ではこの人には短いかな」と感じる場合もあるそうだ。とはいえ、訓練を修了したら、専門校を卒業し就職を決めていかなくてはならない。そこで力を入れているのが、訓練を修了して就職した場合の他機関との連携である。ハローワークとの連携はもとより、地域障害者職業センターの配置型職場適応援助者や、訪問型職場適応援助者、また障害者就業・生活支援センターとも連携を図っている。具体的には「就職支援連絡会議」を開き、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、専門校で集まり、就職後のフォローアップについて検討をしているそうである。またそのほか、専門校は障害者就業・生活支援センター主催のネットワーク会議にも参加しており、積極的にいろいろな情報を入手しようと努力をされているとのことであった。2校の取材を終え、発達障害者・精神障害者の職業訓練における、職業能力開発校の強みとは何か考えてみた。なんといっても、きちんと時間数や科目などの構造を持ち、具体的にスキルアップするためのノウハウを持っていること、またそれは硬直的なものではなく、訓練生の特性や状況を見きわめつつ、柔軟に行われる面もあることがあげられるだろう。また受講する訓練生に対して、指導員や支援員の人数などの面からも手厚い支援があるのも魅力の一つである。そして、コンピュータ技能など、職務遂行に必要な技能に加え、対人技能や自己理解などの職業準備性を高めるための訓練にも力を入れており、就職後の戦力化や、障害のある人自身のキャリア形成におおいに寄与していると感じられた。一方で、認知度がまだ十分とはいえないことと関連するかもしれないが、障害者職業能力開発校の利用希望者は全国的に減少傾向にあるとの情報も私の耳に入ってきている。職業能力開発校に入校するためには、訓練時間に耐えられる体力が必要といった前提もあることなどからも、すべての障害のある人に適しているものではないかもしれないが、それでも職業能力開発校側や指導者側もかなりの努力や工夫をされており、職業能力開発校での実践は非常に魅力的であることを今回の取材を通じて、あらためて知ることができた。このような職業能力開発校の実践が行われていることは、もっと世の中に拡がってよいものであろう。本稿もささやかながらその一助となることを願いたい。就職後の支援および地域支援ネットワークについて二つの訓練校の取材を終えて(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校)物流管理訓練の様子(写真提供:石川県立金沢産業技術専門校)パソコン訓練の様子インターネットを利用したWeb会議システムで、お話をうかがった(左より、西田さん、筆者)働く広場 2024.725

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