本連載は、障害のある人のスポーツを通しての社会参加と効用といった幅広い視点を持つものでした。第1回で、パラスポーツの言葉の意味と現状や歴史について触れた後、第2回ではパラアスリートの職場での実際、働く会社の支援について紹介しました。トップレベルの選手がパラリンピックなどの国際大会でよい成績を収めるうえで、生活を安定させることは何より大きな課題です。企業とパラスポーツの関係はこれにとどまらず、競技団体への経済的支援や人的支援、大会スポンサーなど幅広いものがあります。公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ 0 振興財団(静岡県)の調べ(※1)によ(※2)による障害のない人の競技団体れば、障害者スポーツの競技団体登録者数の平均は499人で、公益財団法人笹川スポーツ財団(東京都)の調査の一団体あたりの平均登録者数10万2986人と比較して非常に少なく、経営基盤は極めて脆弱です。それゆえ競技団体の運営は公的な補助金や企業からの支援に頼らざるを得ない状況です。のです。こうして開発された技術の恩企業と被雇用者、スポンサーとスポンサードという関係のあり方だけでは企業の業績や社会状況により支援の打ち切りがいつくるともかぎりません。そうならないためにも選手や競技団体と企業が互いにメリットのある関係性を構築し、また、互いをさまざまな社会課題を協力し合って解決していくパートナーとして位置づける必要があります。そうした関係を土台として、企業も選手も競技団体も成長していけると考えられます。第4回で紹介されている特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会は、そうした企業との関係を持っている好事例といえます。第3回はパラアスリートを支える装具についてのレポートでした。義足や車いすなどの発展は選手のパフォーマンスの向上につながるだけでなく、その技術や素材は日常で使用する車いすや義足などにも汎用されています。本連載のなかでも触れられたチタン合金やカーボンファイバーは軽くて丈夫な素材として日常生活用の装具や車いすにも使われるようになりました。また、身体を正確に素早く計測し、選手の負担を軽減する技術やスポーツ時の安定した動きを実現するための義足や車いすの構造なども同様です。トップ選手のために開発された技術は一般の車いすや義肢、装具に活かされている恵に成長期にある子どもたちも与あれることを願っています。成長に合わせて高価な装具などを買い替えていくことはむずかしく、そのことが子どもたちのスポーツ参加の機会を奪っていると考えます。もっとも運動の欲求やニーズが高い青少年期の子どもたちがこうずかパラスポーツをめぐる現在の状況藤ふじ田た紀もと昭あき70605040302010 1962(昭和37)年香川県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。2017(平成29)年より、日本福祉大学スポーツ科学部。研究分野は、体育学・障害者スポーツ論。文部科学省スポーツ庁「オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議」委員などを歴任。※1 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団「2023(令和5)年度障害者スポーツを取巻く社会的環境に関する調査研究」※2 公益財団法人笹川スポーツ財団「中央競技団体現況調査 2022年度報告書」障害者:20歳以上で週に1日以上実施国民全体:20歳以上で週に1日以上実施図1 週1回以上スポーツを実施した人の割合(%)「スポーツの実施状況等に関する世論調査」および「障害児・者のスポーツライフに関する調査」(いずれもスポーツ庁)より筆者作成日本福祉大学スポーツ科学部教授公益財団法人日本パラスポーツ協会技術委員会副委員長53.651.540.425.318.219.220.82013年2015年2017年2019年59.956.452.33130.924.92020年2021年2022年 これまで5回にわたり、「障害のある人とスポーツ」についての連載をお届けしてきました。そして8月28日からは、フランス・パリで夏季パラリンピックが開催されます。最終回となる今回は、これまでの記事をふり返りながら、今後のパラスポーツがさらに推進されるための課題について、日本福祉大学スポーツ科学部教授の藤田紀昭さんに執筆していただきました。5232.52023年働く広場 2024.7執筆者プロフィールさん最終回最終回26クローズクローズアップアップ障害のある人とスポーツ障害のある人とスポーツ〜〜だれもがスポーツを楽しめる社会に向けてだれもがスポーツを楽しめる社会に向けて〜〜
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