働く広場2024年7月号
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①スポーツを始める前の状況(スポー②障害者スポーツに関する情報を得て③障害者スポーツの場へのファースト④チームやクラブなど障害者スポーツした補助具を簡単に利用できる仕組みがあれば、さらにパラスポーツの強化と普及に、そして何より子どもたちの成長に貢献できるはずです。第4回と第5回では肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、知的障害のある人のスポーツ実践とそれを支える競技団体や障害者スポーツセンターなどを紹介しました。第2回と第3回の報告も含め、障害のある人のスポーツにはさまざまな人がかかわっていることがわかります。サポートする人の幅広さは障害のない人のそれよりも大きいと思われます。それでもなお、障害のある人のスポーツ実施率は障害のない人に比べて低い傾向が続いています(図1)。さて、障害のある人がスポーツを始め、継続するためには次の七つの条件が揃う必要があることが近年わかってきました(※3)。①~③まではスポーツにアクセスするための条件、④~⑦はスポーツを継続するための条件です。ツに関心があるか否かなど)いるアクセスがある 0   ⑤継続的な障害者スポーツの場へのア⑥競技レベルに応じた社会的支援(家⑦何らかの形(ロールモデルの存在、を継続するための受け皿があるクセス方法が確保されている族、職場などの支援)、経済的支援(海外遠征、合宿、用具の購入など)がある指導者、ライバルの存在、パラリンピックなどの大会、目標となる記録や成績など)で競技に対するモチベーションが維持されている2021(令和3)年にパラリンピックが東京で開催されたことから、開催(図2)。また、小・中学校を中心にオリン(※4)で障害のある人が運前から、多くの人々がパラスポーツに注目し、相当量の報道がなされましたピック・パラリンピックに関する教育が全国各地で展開され、子どもたちもパラスポーツについて学んだり、体験したりしました。その結果、国民の多くがパラスポーツに関する知識を得るようになり、障害のある人もパラスポーツに関する情報をさまざまなルートで得られるようになりました。七つの条件のうち、②に関して大きな進歩が見られたといえます。国際大会で活躍するようなトップレベルの選手たちについてはアスリート雇用が促進されたり、各種助成金が支払われたりするようになり、条件の⑥が改善され、 競技に集中できる環境も整ってきたといえます。しかしながら障害のある人がスポーツを実施しやすい環境が十分であるとはまだいえません。ここでは特に条件①について触れておきたいと思います。2023年度のスポーツ庁の調査動・スポーツを実施しない理由の上位三つは(複数回答)「運動・スポーツが嫌いである」(33・4%)、次に「特に理由はない」(24・0%)、3番目が「運動・スポーツに興味がない」(23・0%)でした。運動・スポーツへの関心のなさが大きな要因になっていることがわかります。過去に運動・スポーツを実施する機会が少なかったり、うまくできないことが原因で嫌いになったり、興味を失うことがあったのではないかと推察されます。このようなことを減らすため、まずは運動やスポーツに関心を持てるような環境をつくる必要があります。学校、地域あるいは職場などのスポーツの現場において、どのように障害のある人にスポーツに参加してもらうのかを考え、さまざまな取組みがなされることが必要です。2025年にはデフリンピック大会が東京で、2026年にはアジア・アジアパラ競技大会が愛知・名古屋で開催されることが決まっています。東京パラリンピックに続き、パラスポーツの国際大会が国内で開催されることは人々に障害のある人やパラスポーツに関心を持ち続けてもらうためのよい機会だといえます。こうした大会のレガシーとして多くの障害のある人がスポーツを通じて日々の楽しみや自己実現ができ、障害のある人もない人も、ともにスポーツを楽しめる社会、すなわち共生社会が実現することを期待したいと思います。開催年夏季パラリンピックピック開催年パラリンピック未開催年冬季パラリン障害のある人がスポーツを継続するために200040002004年2008年2012年2016年2021年2006年2010年2014年2018年2005年2007年2009年2011年2013年2015年2017年2019年2020年17781815186710751195397276264278357120296000800010000843779134714681783987646120001400013767図2 2004年以降の障害者スポーツ関連の記事数(2004年~2021年の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞に掲載されたスポーツ関連の記事数。各社データベースにて「パラスポーツ」など関連キーワードとして検索した記事の合計。筆者作成)※3 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団「2022(令和4)年度障害者スポーツを取り巻く社会的環境に関する調査研究」※4 スポーツ庁「障害児・者のスポーツライフに関する調査(令和5年度)」27働く広場 2024.7

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