だったので、それをモチーフにしました。当日は、主催者が手配したネイルモデルの方の手から少し血が出ていたり爪が折れていたりするなど、施術しにくい条件が重なり落ち込みましたが、「やれることをやるしかない」と覚悟を決めました。さらに競技途中にはモデルの方が「腕が痛い」というので、「いま使用している台の幅を広げれば腕の痛みが和らぐと思う」と審査員に提案しました。施術するうえでは非常に不利な提案でしたが、お客さまであるモデルの方を優先するほうが大事だと考えたからです。審査員の方たちも迅速に動いてくださり、ティッシュボックスにタオルを巻いたもので台の幅を広げました。そんなハプニングも乗り越えて銀賞を獲得できたのは、日々、ネイル施術の仕事を一生懸命に続け、スキルを積み重ねてきた結果だと実感しています。やはり最後に頼れるのは、それまでの経験に尽きると思っています。そういう意味では「私はまだ銀賞」ともいえるかもしれません。これまでをふり返ると、初めて出場した全国アビリンピックの会場でほかの選手たちを見て、「こんなにがんばっている人たちがいたのか」と驚いたのを覚えています。私など比べものにならないほど、ハードルが高い競技に何年も立ち向かい続けている選手がたくさんいることを知り、逆に自分自身が奮い立たされ、励まされました。国際アビリンピック後は、新たな社内育成にもたずさわらせてもらっています。JALサンライトで知的障がいのあるスタッフに、ネイルの基礎的なスキル研修を行っています。研修を受けた数人はさっそく、ファミリーデーや見学ツアーといった社内イベントのネイル体験会で来場者に施術してくれています。私自身も引き続きスキルを磨きながら、施術や指導などを通じて、少しでも職場や社会のお役に立っていきたいと思っています。今後の目標は「安定感を持って施術していく」に尽きます。日々の仕事での積み重ねが私にとっては重要であり、技術者・専門職として求められていることだと再認識しています。ジ(※2)を見て、ぜひ一歩ふみ出してみてください。というのはとても大がかりで、審査基準も厳しい、高レベルな大会なのだと実感しています。障がいの有無に関係なく多くの人に興味を持っていただけたらと思います。ルの仕事というものを大切に思えるようになったのだと思います。自分の実力を測るだけではなく、ほかの選手のがんばる姿を見ることで励まされ、大きな刺激にもなります。いくつになっても本人のやる気さえあれば出場できますので、興味のある方はまずアビリンピックのホームペーこれまで経験してきて、アビリンピック私自身は、アビリンピックをきっかけにネイほかの選手に励まされる――アビリンピックを通して印象に残ったこと、今後の目標について教えてください。山下 ――最後に、アビリンピックに関心のある人たちへのメッセージをお願いします。山下 職場の方より※4 PDCAサイクル: Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)をくり返しながら業務改善をはかる方法 アビリンピックは職業能力の大会ですから、働くなかで高めてきたスキルを競い合い、そこでの経験をまた職場で活かしていくPDCAサイクル(※4)のよい場だと思います。 山下さんは、持ち前の集中力と探求心を活かしながら、日ごろの顧客への施術という仕事を着実に積み重ねていったことが、銀賞につながったと感じています。今後は育成者の立場でも活躍することを期待しています。第10回国際アビリンピックで山下さんが獲得した銀メダル 克村紀 5働く広場 2024.7株式会社JALサンライトマーケティング企画室■■北さん■■■■■■〜第10回国際アビリンピック〜メダリスト
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