再雇用を辞退して退職することになったのだ。かぎられた短い期間での引継ぎ作業にもかかわらず、担当者が使っていたマニュアルは古く、変更点がたくさんあった。実際に引き継いだあとも、関係するいろいろな人から修正を求められるなど、たいへんだったそうだ。「それでも加藤さんは私に説明を求めることもなく、淡々と一人で作業を進めていたので、自分なりのやり方を確立したのだと思います」と話す加藤課長。「でも仕事は一人だけで進められない場合もあり、報連相も大事ですから、会話が苦手でも、きちんと伝えるようにとも指導しています」とつけ加えた。予想外のハードルも乗り越えた加藤さんは、周囲からも頼りにされる存在になっている。加藤課長は「少し無理のある難題をお願いしたとき『それはできません』と即答したのに、数時間後には『できました』といって見せてくれたこともあります。じつはずっと考えていたようです。そういうあきらめない姿勢は本当に尊敬します」という。これについて加藤さんは「いくつか試して、これでダメだったらあきらめようと思ってやったのがうまくいきました」と笑顔を見せた。職場でたいへんなことはないかとの問いには、しばらく考えて「アルバイトをしていたときに比べれば、大丈夫です。大学4年間、同じ飲食店でアルバイトを続けていたので」と教えてくれた。 「調理とレジ打ち以外の接客や盛りつけ、皿洗いまで担当していましたが、複数タスクがこなせずパニックになったことは何度もありました。いまの職場でたいへんなときも、そのときのアルバイトに比べたら耐えられます」じつはこのアルバイトの職歴も、加藤さんを採用する大きな決め手の一つだったのだそうだ。加藤さんは昨年11月から約2カ月間、 7ほかの人を探しているところです」と明別の部署に応援部隊として派遣された。仕事は、手書きの顧客情報をパソコンで文字入力する作業だった。加藤課長は「彼の処理能力がすごく高かったらしく、このままずっといてほしいといわれましたが、私たち人事課としても必要な戦力なので、かし、「将来的には、融資や企画営業の部署でも戦力になれると思います。キャリアアップという意味でも、本人の希望に沿って仕事を任せていけたらと考えています」という。加藤さん自身も「自分が手がけた名簿などが職場で活用されているのを実感すると、働いていてよかったなと思います」と語ったうえで、今後の仕事の目標について「先輩から引き継いだパソコン上の操作マニュアルが分散していたり情報が古かったりするので、簡単にまとめて情報も更新し、みんなにわかりやすいものにつくり直していきたいです」と、頼もしく語ってくれた。加藤さんのいる人事部人事課には、入庫10年以上になる知的障害のある職員もいる。メール便の仕分けや封入作業など事務補助を担当しているが、毎日の作業はリストにして、一つ終わるごとに上司から検印をもらうことで混乱を防ぎ、本人の心理的な安心感にもつなげているという。ほかにもこれまで、視覚障害のある職員のために拡大読書器を導入したり、精別部署に応援もさまざまな事情に応じて加藤さんらが働く人事部人事課のオフィス加藤さんが更新や新たに制作した業務マニュアルの一部働く広場 2024.8
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