いう。「以前まで現場では、受け入れることで生まれる効果が想像されにくく、負担だけがかかると思われていました。それで『うちはちょっとむずかしい』といわれてしまうのが悩みでした」と山本さん。 まず現場の心理的負担を軽減するため、ジョブコーチである山本さんのほか本人の家族や出身の特別支援学校、医療機関、さらに訪問型ジョブコーチも含めたチーム支援の体制を整えた。支援のやり方などを説明し、山本さんが「何かあれば必ず駆けつけて仲介役として対処する」と伝えることで、「それならやってみる」と前向きになる部署が増えていったそうだ。 また、障害のある従業員にちょっとした課題や直してほしいことが出てきたとき、日ごろからつながりのある家族や学校の先生の助けを借りることもある。山本さんはいう。 「特に3年間の信頼関係がある先生は、親のように叱咤激励してくれます。職場に慣れたころ、先生が見学に来るだけで本人もビシッと姿勢を正します。愛情のある厳しめの声がけも含めて周囲に見られていることを自覚してもらっています。さまざまな立場からゆるやかに見守り続けることが大事だと思います」 ちなみに山本さんは、採用から定着まで一人ひとりを着実にフォローできるよう、障害者雇用での採用は2年に1回程度と決めている。ただし採用にかかわらずインターンシップを希望するケースは広く受け入れているそうだ。②ジョブコーチとのつながり 知的障害のある従業員を中心に、山本さんは3カ月に1回以上の個別面談を実施している。業務だけでなく生活面でのフォローもしているそうで「面談をきっかけにトラブルを未然に防いだケースがいくつもあります」 例えば、ある従業員の場合、面談で「何か困っていることはない?」と聞いても最初はないと答えていたが、雑談中のお金の話から「じつは貯金がなくなりました」と明かされた。ゲームの課金に1カ月数万円近く使い込んでいたという。 「金銭管理が行きづまると仕事にも影響することは目に見えています。説明してすぐに課金をやめてもらいましたが、次は漫画やカードなどを買い込むなど浪費癖がありました。そのため親御さんからのサポートもあり、いまは小遣い制になっています。いずれ自立しなければいけないのですが、少しずつですね」 社会福祉法人金沢市社会福祉協議会の訪問型ジョブコーチとも連携している。最近は精神面で波がある従業員について、一緒に面談をしている。本人は経済的な問題も抱えていたが、障害年金を申請していないことがわかり、ジョブコーチに助言をもらいながら本人にていねいに説明して申請にこぎつけた。 従業員のなかには、日ごろから山本さんとLINEでつながり、私生活のできごとなどを共有しているケースもある。「姉のような存在になっているのかもしれませんね。2024年1月の能登半島地震のときに『大丈夫ですか?』と従業員から連絡が来たときは、いろいろな意味でうれしかったです」と山本さん。③社内イベント アール・ビー・コントロールズでは「みんなが幸せになる経営」の一環として、社員同士の交流を図るイベントを毎月開催している。「10月はホテルのスイーツビュッフェに、家族も含めて参加できるイベント(費用の4分の3を会社が補てん)を開催し大好評でした」と山本さんはいう。こうした社内イベントを機に、障害のある従業員同士もプライベートで一緒に旅行に出かけるようになっているそうだ。 「特に障害のある従業員の採用は2年ごとのため、社内で横のつながりができにくく孤立しないかと心配していましたが、社内イベントが効果的な仲間づくりの場になっています」と山本さんは話してくれた。④管理者の勉強会 障害のある従業員を現場でもよりス社内イベントの一つ「クリーンビーチ」(海岸の清掃)(写真提供:アール・ビー・コントロールズ株式会社)働く広場 2025.110
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