働く広場2025年1月号
13/36

ムーズに支援し、受入れ部署を増やしていくために始めたのが管理者勉強会。障害特性への理解や作業指示のポイントを学んでもらっている。実際に受け入れた部署からは日ごろから抱えている質問なども出されているそうで、毎回山本さんがアドバイスをしながら管理者同士が情報共有できる場にもなっている。 「いつでもジョブコーチが駆けつけますと伝えるだけで安心してもらえますし、管理者同士で『一緒にがんばっていこう』という一体感も生まれます」と話す山本さんは、いまもJEEDの石川障害者職業センターなどで開催される研修会に参加しながら、支援方法などを学び続けているという。 アール・ビー・コントロールズ代表取締役社長の遠えん藤どう健けん治じさんにも話を聞いた。 親会社のリンナイで開発などにたずさわり、当社に出向している遠藤さんは、障害者雇用については、2023年、「障害者雇用優良事業所」として石川県知事表彰を受けたときにトップとしての認識が大きく変わったと明かす。 「恥ずかしながらこれまで部下に任せっぱなしでしたが、取組みが社内外に広く知られるなか、私自身もより積極的に取「全社員経営、全社員戦力」り組んでいかねばと思うきっかけになりました」 遠藤さんは表彰式翌日、賞状を手に各部署を回り、障害のある従業員らと面談を行ったところ「彼らの向上心の強さにも驚きました。いまの仕事をもっと追求して改善したいと真しん摯しに考えている様子を見て、ありがたい気持ちにもなりました」という。 面談では、職場への感謝の声も聞けて安心したそうだ。それを伝えた1人が入社10年以上になる男性で、軽度の知的障害がある。職場でめきめきとスキルアップし、電子点火装置の生産ラインにある機械メンテナンスを担当するまでになった。男性は遠藤さんに「障害のある自分を頼ってくれて、やさしくわかりやすく説明してくれることにも感謝しています」と語った。本人の父親からも後日「社長さんとの面談で、自分の目標ややりがいを伝えさせてもらえたことに感謝したい」との手紙が届いたという。 障害のある従業員たちが働く現場も見て回った遠藤さんは、一般社員と一緒になって活き活きと働いている様子に、障害者雇用が、企業の社会的責任という範囲を超え、社員や職場にとってよいことも多いと実感したという。 「例えば現場で行われていた、わかりやすい説明。一般社員に対しても、より理解しやすい方法で伝えたほうがいいに決まっていますよね。また経験や勘に頼るような仕事もなるべくつくるべきではありません。機械の性能や特徴を活かしながら、よりシンプルに、だれがやってもミスを起こさない仕組みは必要で、この先もどんどん進めていけると思います」 また遠藤さんは以前、周辺の社員から「彼らががんばっている様子を見ていたら、自分ももっとがんばろうという気になる」という話も聞いていた。 「社員同士のコミュニケーションやかかわりあいが深い職場では、相手を思いやったり大事にしたりする気持ちが自然と醸成されますね。そうした社風が育まれていく職場環境こそ、会社にとって大事なことだとつくづく気づかされます」と遠藤さん。 今後も障害者雇用を拡大していく方針だという遠藤さんは、「私たちはこれまで『全社員経営』、『みんなが幸せになる経営』を実践してきましたが、もちろん障害の有無は関係ありません。役割分担があり、全員がレギュラーでフル出場する。全社員が一人ひとり自己のベストを尽くすことが大事で、自分の持てるスキルをフルに発揮するよう努めながら挑戦する、それをしっかり支援できる会社を引き続き目ざしていきたいと思っています」と力強く語った。表彰式の翌日、遠藤さんは障害のある従業員らとグループ面談をした(写真提供:アール・ビー・コントロールズ株式会社)代表取締役社長の遠藤健治さん働く広場 2025.111

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る