働く広場2025年1月号
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用語解説キャリア論が専門のハーシェンソン(※5)などが障害のある人たちもキャリアの概念が成り立つことをもたらし、障害者もキャリアを持ち、その成長を支援する考え方が根づいてきました。日本の支援では、障害者が仕事を得ること自体が目標になりがちですが、本来はその人の人生全体を見すえ、「キャリア」を形成していく視点が重要です。障害の有無にかかわらず、一人ひとりの生涯にわたる成長や社会への貢献を考えた「キャリア支援」が必要だと思います。 八重田  アメリカはジョブ型の雇用が基本で転職があたり前の社会なので、この視点が取り入れられやすいと思います。日本でもコロナ禍を経て、リモートワークが増えるなど、ようやく少しずつジョブ型の雇用が増える機運が見えてきましたね。日本においても、その視点をもって、職業リハビリテーションのあり方も拡がっていくとよいと思います。職業リハビリテーションを 支える人材育成の課題 松爲  このようなキャリア支援を充実させるためには、障害者雇用にかかわる支援者が、職業リハビリテーションの役割を適切に認識していることが大切だと思います。支援者の人材育成において、支援者の技術や方法論はもちろん重要ですが、それだけではなく支援の根底にある価値観を共有すること、つまり「働くことの本質」や「ウェルビーイング」との関係を深く理解することが不可欠だと思います。 八重田  そうですね。支援者自身が、職業リハビリテーションは、単に仕事を提供することを目的とするものではなく、対象となる人の人生に大きな影響を与え、その人の人生に喜びをもたらす、きわめて重要な役割を果たしていることを認識することが大切ですよね。 松爲  「支援者の人材育成」は、2025年の障害者雇用の大きなテーマともいえますね。2025年度から、初めて就労支援にたずさわる人を対象に「雇用と福祉に関する分野横断的な基礎的知識とスキルを付与する研修(基礎的研修)(※6)」が始まります。また「就労選択支援(※7)」も新たにスタートし、それにともなって支援者の役割がさらに重要になります。雇用と福祉サービスを横断的に選べるようになると、障害者が自分に合った仕事と生活を柔軟に選択し、社会に参加するための道がいっそう広がりそうですね。私個人も、支援者にとって最も重要な、支援における価値観を理解し、実践で担当者と生活支援担当者、就労移行支援事業所の就労支援員、就労定着支援事業所の就労定着支援員の四者は受講必須となる。JEEDでは2025年度より開始予定※7 就労選択支援障害者本人が就労先・働き方についてよりよい選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援するもの※5 ハーシェンソン.D.Bアメリカのキャリア理論の研究者。1970年代に「進路発達」と「職業的発達」は相互に関連するととらえ、その後の障害者とキャリア理論の関連性の理解に役立つ「生態学的モデル」を作成した※6 基礎的研修障害者の就労支援に携わる人材に対する雇用・福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修。障害者就業・生活支援センターの就業支援働く広場 2025.122

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