的に自分の道を切り開くのは本人自身です。支援の本質は、本人がその力を育み、自分の意思で道を進んでいけるようにすることにあります。この「本人の力を高める」という視点は、これまでの日本の支援では不足していた部分かもしれませんが、まさに今後の支援で最も重要視されるべき要素ですね。また、支援者には企業に対し、コンサルティングを行う力、企業と支援機関をつなぐコーディネーションをしていく力も求められます。「雇用の質」の向上を実現するためには、企業に責任を求めるだけでは不十分です。本人、支援者、企業が、それぞれの立場からその人のキャリア形成にかかわる責任を持ち、協力して取り組む姿勢が不可欠だと思います。 八重田 研究という点からいうと、私の指導する大学院にも、働く障害のある人や支援者にインタビューするなど質的な研究を行う学生が増えてきました。質的研究は量的研究と比べると、主観的な要素が大きいと思われがちなのですが、やはり一人ひとりの生の声を拾うことはとても重要だと感じています。職業リハビリテーションの研究で、質的研究はまだ少ないと思いますが、インタビュー対象者が主体となる視点をもったアプローチを蓄積することで質的研究の質を高めていくことが必要だと思います。IT技術が開く 未来の障害者支援の可能性 松爲 最近は、IT技術やAIの進化が目覚ましく、働き方や支援の形態も変化しています。例えば、コロナ禍を経て、リモートワークの導入が進んだことは、精神障害や身体障害等がありオフィスでの勤務がむずかしい人にとっては、働きやすさの向上につながったと思います。企業にとっても、リモートワークという新しい働き方を導入することは試行錯誤の連続だったと思いますが、同時に、リモートワークに適した仕事のつくり方を見直す機会にもなりましたよね。 八重田 アメリカでのIT技術の活用役割満足充足機能の発達 技能の発達 技能の活用資源の開発 資源の調整 資源の修正介入と支援対処行動・自己実現 ・安全・自尊 ・生理的・連帯個人の(欲求)ニーズ ・職場 ・地域 ・家庭など環境(集団)ニーズキャリア支援に基づく職業リハビリテーション学理念・理論・知識・技術キャリア発達適応 適応向上・定着 QOL Well Being出典:松爲信雄編集委員が作成三位一体の支援図雇用の質支援の質キャリア意識セルフマネジメントコンサルテーション・コーディネーションライフキャリア支援ワークキャリア支援ワークキャリア支援企業関係者支援機関家族本人働く広場 2025.124
元のページ ../index.html#26