働く広場2025年1月号
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は、さらに進んでいて、移動が困難な障害者に対して、テレリハビリテーション(遠隔リハビリテーション)を実施している事例があります。リモートでの支援が可能になれば、都市部から離れた地域に住む障害者も支援が受けやすくなるなど、支援の幅が広がると思います。 松爲  リモート支援には、移動の負担が減るという点でも非常に大きな可能性がありますね。一方で、対面でのコミュニケーションには、リモートにはないメリットもあります。例えば、相手の表情や仕草から感情や心理状態を察するには、対面の方が適していますので、対面でのコミュニケーションはやはり欠かせないと思います。 八重田  リモートと対面をバランスよく組み合わせて、両者の利点を最大限に活用することが理想ですね。テクノロジーの力を活かすためには、支援者自身がその技術を理解し、活用するスキルも必要です。職場でも活用していくために、職業リハビリテーションと情報工学を合わせた新たな分野も求められるようになるかもしれません。こういった時代の流れに応じた変化に対応していくことも必要になると思います。 松爲  AIを使ったカウンセリングなども登場するかもしれませんね。最新の技術を用いた支援には非常に期待が持てますが、だからといって、支援者の存在が不要になるわけではありません。 八重田  そうですね。AIには、人間のように、相手の感情や表情の微妙なニュアンスを読み取ることがまだむずかしいので、相談者にも「人に相談したい」という気持ちは残るでしょう。AIを利用したアバターが支援者の業務の一部をになうとしても、人間が行うケアやサポートが欠かせない領域は必ず残ります。やはり最終的には、「人による支援」は重要ですね。 松爲  今後も、対話や相談といった「人と人」とのコミュニケーションが支援の根幹であるという点は変わらないと思います。ただし、それを支える支援者が、日本では圧倒的に不足している現状があります。まずは、この人材をどのように増やしていくか、そして支援の質を確保していくかが今後の障害者雇用の鍵となると思います。 八重田  職業リハビリテーションにたずさわる支援者の立場がしっかりと確立され、企業内でその専門性を発揮できるようになるとよいですね。 松爲  支援者の立場がしっかりと確立され、障害者が働きやすい職場環境が整えば、ひいては、多様な人々が自分の力を最大限に発揮できる職場環境を築くための基盤となると思います。日本全体を見ても、働き手が不足していくことが課題になっています。今後の企業の成長には、こうした取組みが必要不可欠であり、企業文化として根づかせることが必要だといえるのではないでしょうか。本日はありがとうございました。 八重田  こちらこそありがとうございました。今後の障害者の職場環境や支援の場においてITの活用やAIの可能性などについて意見を交わす松爲委員(左)と八重田委員(右)働く広場 2025.125

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