働く広場2025年1月号
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 石川県金沢市にある「アール・ビー・コントロールズ株式会社」(以下、「アール・ビー・コントロールズ」)は、コンロや給湯器などの熱エネルギー機器の大手メーカー「リンナイ株式会社」(以下、「リンナイ」)の子会社として1971(昭和46)年に設立された。電子制御ユニットやリモコン、LED照明などの設計から生産までを手がけ、石川県内に本社と2工場・物流センターがあるほか韓国と中国に関連会社を持ち、リンナイ以外の取引先も多岐にわたる。 同社の障害者雇用については、社員の中途障害や単発的な採用はあったものの法定雇用率をなかなか達成できなかったそうだ。そこで総務部の担当者や現場の管理職らが奮起して採用から定着までの支援体制を整えた結果、現在は従業員594人のうち障害のある従業員が13人(身体障害4人、知的障害9人)、障害者雇用率2・90%(2024〈令和6〉年6月1日現在)だという。2023年に「令和5年度障害者雇用優良事業所」として石川県知事表彰を受賞、翌2024年3月には、人を大切にする経営学会「第14回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞を受賞している。日常生活を支える製品づくり これまでの支援担当者らの取組みや工夫、生産現場や本社内の業務において戦力として働く障害のある従業員を紹介する。 アール・ビー・コントロールズが障害者雇用へと積極的に動き出したのは2017(平成29)年ごろ。その火つけ役の1人が、総務部人事課で主事を務める山やま本もと麻ま梨り菜なさんだ。 入社以来ずっと採用や広報にかかわってきた山本さんは障害者雇用も担当していたが、毎年のように納付金申請をするなかで、「納付金さえ納めればいいのだろうか」との疑問を抱くようになった。そんななかで2017年、当機構(JEED)が実施する「障害者職業生活相談員資格認定講習」(※1)を受けた。生産現場の課長と部下の2人もたまたま一緒に受けるなかで、その部下の男性社員が、「自分にも知的障害のある子どもがいる」ときっかけは障害者職業生活相談員資格認定講習話してくれた。それが山本さんにとって大きな転機になったという。 「その男性社員が、子どもの就職には苦労するとしながら『私たちの会社も、障害のある人がどんどん働ける職場になったらいいね』といったところ、隣にいた課長が『じゃあ俺たちのところで受け入れてみよう』と提案してくれたのです」 3人で講習を受けながら「生産現場でもやれることがありそうだ」、「こういう作業ならできるかも」などとアイデアを出しあった。 一方で山本さんは「本格的に障害者雇用を進めるには、どんな知識や準備が必要だろうか」と調べるうちに、「企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修」(※2)のことを知った。上司から「どんどんやってみればいいよ」と背中を押され、JEEDで実施する千葉会場での4日間の集合研修に参加。山本さんは「研修内容は予想以上のレベルで、グループワークではさまざまなケースの赤裸々な話を聞けました。同じような問題を抱える仲間がいると知ったことも自分のなかでは力になりました」とふり返る。 さっそく採用活動に動き始めた山本さんは、地域の特別支援学校が毎年開催している公開セミナーにも参加した。学生たちの就労先や、どういった仕事・業務に向いているか、逆にどんなことが課「職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修」などを参考に、採用から定着までの体制を整える1知的障害のある従業員を公私にわたり多面的にフォロー2管理者勉強会やトップからの発信などで職場理解を拡大3POINTアール・ビー・コントロールズで生産される「電子制御ユニット」(写真提供:アール・ビー・コントロールズ株式会社)※1 障害者職業生活相談員資格認定講習の詳細はJEEDホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04/koshu.html※2 企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修の詳細はJEEDホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/seminar/job_adapt02.html総務部人事課主事の山本麻梨菜さん働く広場 2025.17

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