⑤企業等における障害者の職業能力や障害者雇用に関する理解・啓発 特別支援学校が「技能検定」に着目し、導入を進めてきた背景には、前述したように産業構造の変化に対応した職業教育の充実や企業就労への取組みの充実を目ざしていることに加え、技能検定の実施によって、生徒が「目標を持つこと」や「何かにチャレンジすること」、「自己の力を知ること」、「他者を意識すること」など、キャリア発達の促進につながる「教育的意義」が大きいということがあげられる。 また、生徒のチャレンジやその成長を目にすることにより、指導および支援にたずさわる側である教員、保護者、企業等の担当者が刺激され、意識変容が図られるなど、キャリア発達支援における相互作用による環境開発が成果としてあげられる。すなわち、生徒の「本気」は大人の「本気」を引き出すのである。 近年、特別支援学校高等部生徒のアビリンピック(障害者技能競技大会)への参加も増えてきている。 アビリンピックとは、障害者が日ごろつちかった技能を競い合い、職業能力の向上を図るとともに、企業や社会に対する障害のある人々への理解と認識を深めアビリンピックと 特別支援学校技能検定の違い また、青森県や福島県では、各校が作業製品を展示したり、実演ブースを設定したりし、生徒が自分たちの取組みを発信したり、他校のブースで相互に体験したりしている。 特別支援学校高等部に在籍する生徒は、産業現場等における実習(いわゆるインターンシップ)については、高等学校に比べて機会が確保されているといえるが、スポーツや文化的活動、大学受験のための模擬試験など、他校の生徒と場をともにしたり競ったりすることについては、特別支援学校は高等学校と比べて機会がかぎられている。そのため、技能検定は特別支援学校の生徒にとって貴重な「チャレンジする機会」となっている。 特別支援学校技能検定の意義として、次の5点があげられる。①産業構造の変化に応じたキャリア教育および職業教育の充実②生徒や教員にとっての職業教育における目標の明確化③学校を越えた学び合いによる生徒の働くことや学ぶことに対する意欲向上と自己理解の促進④キャリア発達の視点をふまえ、社会的・職業的自立に向けた授業や教育課程の改善特別支援学校技能検定の意義 特別支援学校技能検定は、2007(平成19)年の東京都による「都立特別支援学校清掃技能検定」が始まりとされている。2014年には10自治体が実施(藤川、松見、菊地、2016)し、2015年には21自治体(明官、2016)、2016年には26自治体と増加した。その後も実施自治体が増加しており、その多くは知的障害のある生徒を対象とした取組みであったが、近年その対象を広げようとする自治体もみられる。技能検定は学校単位で実施するものを含めると、全国各地で取組みが進められてきている。 技能検定には「清掃」、「接客」、「事務」、「流通」、「食品加工」など、多様な種目が導入され、年々充実が図られてきている。当初から多様な種目に対応しているのは広島県などがあり、「清掃」、「接客」、「パソコン入力」、「食品加工」、「物流」などの種目を実施している。 また、すべての障害種別を対象とした取組みを進めているのは、青森県や福島県などであり、後述するように青森県では、生徒の現在の学びや将来の夢について、「プレゼンテーション」、「ポスター(現在は「プレゼンテーション」に統合)」、「パフォーマンス」といった手段を用いて表現する「コミュニケーション部門」を実施している。特別支援学校技能検定とはキャリア教育・職業教育の充実1企業等と特別支援学校の連携・協働2チャレンジする経験とふり返りと 対話による「意味づけ」3POINT青森県特別支援学校技能検定・発表会の会場となった「新青森県総合運動公園マエダアリーナ」(青森県青森市)働く広場 2025.221
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