は、「該当者なし」が3143社(約91%)であり、当該従業員が1人以上いるとしたのは、313社(約9%)でした。以下は、当該従業員が1人以上いるとした企業からの回答結果です。 職業生活上の問題(23項目)(図)について、「全く問題がなかった(1点)」、「あまり問題がなかった(2点)」、「やや問題があった(3点)」、「とても問題があった(4点)」として項目ごとに平均点を算出したところ、得点が高い順に「⑫マルチタスクが苦手(複数の作業を並行して行うことが困難など)だった」、「⑰仕事の優先順位を付けられなかった」、「⑬本人が不注意からミスをしてしまうことが多かった」、「⑤本人が上司や同僚が言ったことなどをうまく理解できなかった」、「⑥本人が自分が言いたいことを相手にうまく伝えることができなかった(しゃべりすぎる、情報を伝えすぎる、不適切なことを言うなど)」となっており、これらの5項目に対し、企業が支援や配慮を実施した割合は7割を超えていました。 職業生活上の問題に対する支援や配慮(16項目から複数回答)のうち、企業が実施した割合が高い項目は、「業務指示方法の見直し」(54・8%)、「業務指示や相談に関する担当者の配置」(51・7%)、「職場のルールや迷惑に感じていることを説明し、望ましい対応を伝えた」(51・0%)であり、特に問題を解消した項目として割合が高い項目は、「業務指示方法の見直し」(29・2%)、「本人が遂行可能な職務の創出」(28・8%)、「障害特性上困難な業務(顧客対応や対面業務等)への配慮や工夫、職務内容の見直し」(21・5%)でした。本人が遂行可能な職務を準備し、指示方法の見直しなどを1 はじめに 2005(平成17)年4月の発達障害者支援法の施行にともない、発達障害者に対する支援は充実が図られてきており、職場における課題や継続雇用に向けて講じるべき対処策についての知見は蓄積されつつあるものの、先行研究の多くは、発達障害者として雇用された人を対象としていました。しかしながら、採用後に発達障害であることが事業主に把握された場合に、職場適応上の課題への対応が、新たに求められることもあります。 そこで本調査研究では、事業主が採用後に発達障害であることを把握し、就労継続のために職場適応上の課題解決に取り組んだ事例を通して、発達障害を把握したプロセスや課題解決のプロセスを整理し、採用後に発達障害であることが把握された従業員(以下、「当該従業員」)を雇用する事業主にどのような支援が必要であるかを明らかにすることを目的としました。本稿では、調査研究全体のなかで、企業アンケート調査と企業ヒアリング調査の結果の一部について紹介します。2 調査方法(1)企業アンケート調査 2021(令和3)年6月1日現在の障害者雇用状況報告の対象企業10万6921社から、規模×産業×障害者雇用の有無による層化抽出により1万5000社を抽出し、人事・労務管理担当者あてに依頼文を郵送し、Webアンケートフォームにより各社1件の回答を求めました。(2)企業ヒアリング調査 JEEDの地域障害者職業センター経由で承諾が得られた5社に加え、企業アンケート調査でヒアリングへの対応が可能と回答した51社のうち5社の、計10社に対してヒアリングを実施しました。ヒアリング対象者は、総務担当者、人事担当者、障害者雇用担当者、上司、経営者、社内保健師または社内看護師など、当該従業員の状況をよく知る方々としました。3 調査結果の概要(1)企業アンケート調査 3456社から回答を得ました(回収率23・2%)。過去5年程度の間の当該従業員の人数事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門働く広場 2025.228
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