ベニズワイガニなどの水揚げで知られる鳥取県境さかい港みなと市。この地で1970(昭和45)年に設立された「日に本ほん海かい冷れい凍とう魚ぎょ株式会社」(以下、「日本海冷凍魚」)は、国産カニの解体から冷凍、調理食品の加工、販売までを一手に行っている。 障害者雇用については2000(平成12)年に「障害者雇用優良事業所」として鳥取県知事表彰を受けていたが、その後、障害のある従業員の離職が続き、在職者がゼロになってしまったという。しかし、2011年から2代目として代表取締役社長を務める越こし河かわ彰あき統のりさんが、障害者雇用の積極的な推進を決め、特別支援学校からの実習生受け入れを中心に採用活動を開始。いまでは従業員123人のうち障害のある従業員は8人(知的障カニ加工食品の製造販売害7人、精神障害1人)で、障害者雇用率は6・09%(2024〈令和6〉年6月1日現在)にのぼる。 越河さんは「障害者雇用では一定期間の実習を行うことでミスマッチが起こりにくくなり、採用後はそれぞれ特性を活かしながら、向上心を持って働いてくれているようです」と話す。各工程にあるさまざまな作業から、本人の特性に合ったものを見きわめ、慣れてきたら少しずつ作業の幅を広げていくようにしているという。製造現場で働く障害のある従業員と、職場の取組みについて紹介する。 越河さんからのトップダウンで、再び障害者雇用に取り組むことが決まった2011年、タイミングよく地元の特別支援学校から職場実習の依頼があった。そ会話が苦手な男性の大きな成長のとき受け入れた実習生が、2012年に入社した藤ふじ本もと尭あき大のりさん(31歳)だ。いまは商品の出荷作業の現場で働いている。 取材した日は、加工食品を詰める組立前の段ボールにスタンプで加工日付の押印作業をしたあと、上司の指示を受けて冷凍庫にある大量の氷をスコップでケースに移し換える作業を行っていた。ほかに商品の箱詰め作業も担当している藤本さんは、「例えば、カニの甲こう羅らのサイズによって箱が違うので、最初は、一つひとつ大きさを見きわめるのがむずかしかったです」と説明してくれた。 朝8時半からのフルタイム勤務だという藤本さんは、「入社したころは、ちょっと休みがちでした」と明かす。 「仕事を覚えるのがとてもつらくて、ほかの人に話すこともできませんでした。でも会社の人にいろいろ話しかけてもらってから、自分でも話せるようになって、仕事にも慣れて、休まないようになりました」 この経緯について、生産部チーフマネージャーの柳なぎら楽一かず成なりさんと生産部リーダーの高たか橋はし多た希きさんに話を聞いた。2人は、障害のある従業員の支援役として、企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)一定期間の職場実習で特性を見きわめ、定着と戦力化を図る1現場のキーパーソンを決め、ノートや日誌を活用し安心感につなげる2家族や支援機関と連携しながらフォローする3POINT日本海冷凍魚株式会社 代表取締役社長の越河彰統さん加工食品の出荷作業を担当する 藤本尭大さん国産カニの加工から販売までを 手がける「日本海冷凍魚株式会社」働く広場 2025.25
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