連携している障害者就業・生活支援センター提供の資料をアレンジし、特性に合わせて数種類の作業日誌を用意した。選択肢として「仕事で注意、指摘されたことがある(ある・ない)」、「体調はどうか(悪い=1~5=よい)」、「相談したい、気になることがあった(ある・ない)」といった内容を基準に、「仕事で困ったレベル(1~5)」、「仕事で失敗しちゃったレベル(同)」、「嫌な気持ちになったレベル(同)」、「体調レベル(同)」など、わかりやすい表現の選択肢も独自に用意した。 毎日、昼休みなどに総務部のあるフロアへ提出に来てもらい、その窓口で高橋さんたちが一緒に内容を確認し、「ざっくばらんに会話をやり取りしながら、本人の調子や異変を感じとるようにしています」(高橋さん)とのことだ。 また現場では、障害のある従業員一人ひとりにメンター役の社員がつき、仕事の指導や助言をしている。高橋さんによると「本人が頼ることのできる社員を一人に絞っておくことで、仕事のやり方をぶれることなく教えられると同時に、何かあれば気軽に相談できるキーパーソンのような存在として、障害のある従業員の精神的な支えにもなっています」という。そこで確認された課題は、ケースによっては高橋さんたちとも共有し、必要に応じて家族や障害者就業・生活支援センターなどと連携して対応しているそうだ。 こうした支援体制を整える一方、本人に対しては、基本的な挨拶を欠かさないよう力を入れて指導してきたという。柳楽さんが説明する。 「一緒に働いていると『ありがとう』、『ごめんなさい』といった言葉が出てこない従業員が少なくありません。いくら自分からいい出しにくいといっても、少しずつ周囲との心のすき間ができてしまいます。日ごろから助け合わなければいけない職場ですから、本人のためにも、最低限のマナーは必要です。特別支援学校などにもこうした指導をお願いしています」 続いて見学させてもらったのは、カニ臨機応変に動く現場の冷却作業の現場だ。解体されたカニが部位ごとにケースに入って流れてきたものを素早く冷却容器に落とし入れ、温度によって手作業で氷を放り込みながら調節する。「流れ作業を止めないよう、いろいろな作業を考えながら臨機応変に動かなければいけない忙しい現場です」と高橋さんが説明してくれた。 ここでてきぱきと作業していたのは、2017年入社の川かわ上かみ綾あや音ねさん(26歳)と、2024年入社の矢や吹ぶき香か菜なさん(25歳)。2人は中学校時代からの知り合いで、いまは毎日一緒に通勤している仲よしだそうだ。 川上さんは、特別支援学校にいたときに2回、それぞれ2週間と1カ月程度の職場実習に参加し、「もともと料理が好きで、食品関係の仕事がしたいと思い志望しました。実習時から冷却作業もやらせてもらえました」という。 「実際に仕事を始めてからは、覚えることが多く、何度も失敗したり間違えたりしました。いまもミスをしないよう注意しながらの作業です」としながらも、「この仕事が好きです。決まった流れ作業が、私に合っていると思います」と語る。 「この職場は、本当にみなさんやさし冷却を終えたカニ入りのケースを運ぶ川上さんカニの冷却作業を担当する 川上綾音さん社内のコミュニケーションに 活用される作業日誌カニの冷却作業を担当する 矢吹香菜さん働く広場 2025.27
元のページ ../index.html#9